マネーフォワードは11月30日、人事労務領域を対象に社内向けAIチャットボットを提供するHiTTO(ヒット)の全株式を取得し、完全子会社化すると発表した。両社のサービス連携によるユーザー体験の向上に加え、クロスセルを推進し、ヒットが得意とする大企業を中心に顧客基盤のさらなる拡大を狙う。
取得額は新株予約権を含めて19億9900万円。株式譲渡は今月中を予定。子会社化後も、ヒットの現経営陣は引き続き同社の経営に関与する。
ヒットは2006年に設立され、従業員の問い合わせに自動で回答するチャットボットを開発・販売している。主に中堅規模以上の企業に導入されており、導入企業に占める東証一部上場企業の割合は3分の2以上。業績は堅調に推移しており、21年2月期の売上高は約3億1800万円だった。
マネーフォワードはここ数年、これまでの個人事業主や中小企業のバックオフィス向けアプリケーションに加え、中堅企業向けの製品を拡充してきた。現在、これらの製品は中堅企業だけでなく大企業からの引き合いも増えているという。
山田一也 執行役員
同社の山田一也・執行役員ビジネスカンパニーCSOは「われわれの顧客にヒットの製品を販売するだけでなく、今後はヒットのお客様にわれわれのサービスを利用していただく機会も出てくる」と述べ、今回の子会社化を大企業への導入拡大の足掛かりにする考えを示した。
サービス連携では、ヒットのチャットボットと「マネーフォワード クラウド人事管理」「マネーフォワード クラウド勤怠」などを連携させ、人事労務担当者の業務の効率化を図る。データ連携を進めてユーザーごとに個別化された回答の実現も目指す。
ヒットの五十嵐智博代表取締役Co-CEOは、マネーフォワードの傘下に入ることを選んだ理由について「会社設立から16期目となり、資本構成が時代を感じさせる内容になっていた。今後の事業成長を最上段に置いた時、最適な手段は何かと今夏ごろから考えていた中で、今回の出会いがあり、この結果に至った」と述べた。(齋藤秀平)