SAPジャパンは7月5日、中堅企業向けのSAP S/4HANA Cloud製品となる「All-in-Oneパートナーパッケージプログラム」の提供を開始した。SAPのパートナー企業が有する導入ノウハウやプロジェクト進行の方法論、テンプレートなどを業種別にパッケージ化し、パートナー経由で販売する。システムの対象となる業務範囲や導入にかかる期間、費用の目安が提示できる点を特徴とし、ユーザーの導入への不安を軽減する。同社は中堅・中小企業への販売を100%間接化する方針を掲げており、今回のパッケージ製品はその推進に向けた施策となる。
田原隆次 統括本部長
同日開かれた報道向けセミナーで、同社バイスプレジデントの田原隆次・ミッドマーケット事業統括本部長は、製品を構成する要素として▽成功するプロジェクトの進め方(方法論)▽業界・業務範囲別に事前定義された業務プロセスと機能群▽パートナー独自のノウハウ・アセット・各種導入ツール▽明示された期間と費用──の4点を挙げた。これらのポイントを押さえることで「シンプルかつ短期に、また低コストで導入を進め、早期の効果創出、リターンの最大化を目指せる」と強調した。
パッケージ活用による導入期間は企業規模で異なるものの、おおむね1年前後を見込む。費用に関しては、年商の1%を下回る価格帯から用意した。同社ではこれまでにも、期間やコストの事前提示を検討していたが、実現には至っていなかったという。今回、それが可能となった背景について、田原統括本部長は、パートナー企業の経験値が蓄積されたことに加え、システムを業務に合わせてカスタマイズするのではなく、標準機能にユーザーが業務を合わせる意識が高まった結果、複数の事例から期間やコストを算出しやすくなったと説明した。
製品のターゲットとしては年商1000億円以下の企業を想定する。提供開始時点で製品を取り扱うパートナーは、アイ・ピー・エス、NTTデータグローバルソリューションズ、コベルコシステム、JSOL、SHINコンサルティング、ビジネスエンジニアリング、日立システムズ、フォーカスシステムズ、フリーダムの9社となる。
プログラムに参画するパートナーは、順次拡大を予定している。田原統括本部長は「パッケージを使って、どう業務を改革していけるか。そのような視点で(ユーザーを)リードできるパートナーを求めている」と呼び掛けた。対象となる業種は組立製造、プロセス製造・医薬、商社・卸、プロフェッショナルサービスを設定している。
同社は2月、中堅・中小企業への販売を2022年中にもすべてパートナー経由とする方針を公表している。田原統括本部長は、22年版中小企業白書を引き合いに、業務プロセス見直しによる業務効率化やデータ分析の高度化によるビジネスモデル変革に取り組む企業が増加しており、その基盤としてERPへの需要が高まっていると指摘。中堅・中小企業市場の成長性は大きいとの見方を示した。
セミナーではパートナーのテンプレートを活用し、SAP S/4HANA Cloudを導入したニチバンの事例も紹介された。
(藤岡 堯)