NECは9月22日、グローバル5G事業に関するメディアブリーフィングを開催した。「2025中期経営計画」で成長領域に位置づけている同事業の進捗と今後の戦略を発表し、Open RAN市場でシェア拡大を目指す方針を示した。
2022年度の重点施策は「Open RANの商用システム構築による市場形成、およびポートフォリオ強化による提供価値の拡大」と「顧客エンゲージメントによる各領域の強化」、「5G技術を備えたリソースのグローバルへの拡充、体制強化」の3点だ。
グローバル5G事業における2022年度の重点施策
「Open RANの商用システム構築による市場形成、およびポートフォリオ強化による提供価値の拡大」では、SI体制とO-RUのポートフォリオを拡充することで、製品の提供価値だけでなく、スピード感のある商用システムの構築を目指す。先行している欧州顧客のプロジェクトに注力して実績を重ねることで、幅広い場面でOpen RANが使えることを証明する狙いもある。海外では、日米豪印(QUAD)の連携によるセキュアなネットワークの枠組みも推進していく。
「顧客エンゲージメントによる各領域の強化」では、計五つの領域の取り組みを紹介した。このうち、O-RUの領域については、顧客のニーズの多様化に対応するため、各国の周波数に合わせてポートフォリオを拡大に力を入れるとした。CU/DU(基地局の制御部)については、チップベンダーと連携し、仮想化RANの本格拡販を開始すると説明した。このほか、国内の大規模ネットワークでの実績やパブリッククラウドの連携を武器に、5Gコアネットワークの機能強化版を欧州や北米に展開するとした。
「5G技術を備えたリソースのグローバルへの拡充、体制強化」では、直近で買収した米Blue Danube Systems(ブルーダニューブシステムズ)とアイルランドのAspire Technology(アスパイヤーテクノロジー)のケイパビリティをさらに強化し、欧州・北米・インドを中心にビジネスの拡大を図る。
同社は、Open RAN拡大に伴う産業構造変革をチャンスと捉え、主力領域である国内キャリア向け事業のアセットとノウハウを生かすかたちでグローバル5G事業を展開。21年度と本年度は積極投資期として、O-RUを中心に顧客を獲得しつつ、ソフトウェアのポートフォリオを拡大する戦略を進めている。
次のフェーズである23年度から25年度は投資回収期としており、O-RUとソフトウェア、SIビジネスを組み合わせ、5Gネットワークを構築するソリューションを統合的に提供するという計画を立てている。ソフトウェアやサービスに軸足を移すことで利益率を伸ばす考えだ。
Mobile World Liveの調査によると、Open RANに対して、主要な通信事業者の85%が導入意向を示しており、25年にはグローバル基地局で約30%のシェアを占める見通しとなっている。
河村厚男・執行役員常務は「およそ1兆円になる市場で15~20%のシェア獲得を目指す。今後1~2年で多くの事業者が購買段階や商用稼働に進む可能性があり、その呼び水となるのが海外での稼働実績。本年度は特に欧州での商用稼働に貢献することで実績を積みたい」と戦略を語った。
河村厚男・執行役員常務
関連ビジネスの目標は、25年度の売上高で1900億円、営業利益率で10%を掲げる。22年度は受注ずれなどの影響で、1100億円の計画に対して820億円で着地する見込みになっているが、最終的な目標には影響はないとした。
河村常務は「国内での売り上げは大きく伸長している。また、海外では欧州顧客とのエンゲージメントを強化・拡大し、高い評価を得ている。本年度の目標は保守的な数字となっているが、堅調な投資が予想される通信事業者に確実な部材デリバリーなどで安心感を高め、業績の巻き返しを図る」とコメントした。(大蔵大輔)