クラウドデータウェアハウス(DWH)ベンダーの米Snowflake(スノーフレイク)が展開するデータマーケットプレイス事業が、国内で拡大の兆しをみせている。ユーザー企業がデータを共有・売買できる仕組みで、10月に入り、6社がデータ提供を表明した。日本法人はデータコラボレーションによる新たなビジネスの可能性を提案することで、国内におけるマーケットプレイスの活性化を促す狙いだ。24日に開かれた同事業の戦略説明会で日本法人の東條英俊社長は「オープンデータを提供するすべての企業にマーケットプレイスを利用してもらいたい。われわれが(データ共有の)市場を主導していく」と意気込んだ。
(藤岡 堯)
マーケットプレイスは、DWH「Snowflake」のユーザー企業が所有するデータセットを提供する基盤で、データを利用したい企業は、Snowflakeユーザーであれば、特別な作業を行うことなく入手できる。データセットはコピーされず、常に最新バージョンに同期されるほか、ガバナンスも担保されており、自社と他社のデータセットを容易に掛け合わせ、ビジネスに生かすことが可能になるという。日本を含めたグローバルで260社を超える企業がデータプロバイダーとして参画し、1500以上のデータセットが提供されている。国内ではまだ始まったばかりで「模索している」(東條社長)段階ではあるが、データ提供企業は徐々に増えつつある。
(左から)QUICKの山内康弘・副本部長、スノーフレイク日本法人の東條英俊社長、
デロイトトーマツリスクアドバイザリーの朝日基雄・シニアマネージャー
今回、参画が発表されたのは東芝テック、インテージ、Tangerine、xMAP、エム・データ、メディカル・データ・ビジョン。POSや来店者情報、商品情報、店舗立地、テレビのコンテンツ、医療ビッグデータなど多様なデータが加わった。説明会では、9月に加わったQUICKの山内康弘・サービスプロダクト本部副本部長が自社の取り組みを紹介した。
QUICKは金融情報や企業情報に独自の分析を加え、経営や投資の意思決定をサポートする事業を展開し、マーケットプレイス上では金融マーケットデータを提供している。今後は業績や統計などの伝統的なデータとは異なる「オルタナティブデータ」なども公開する予定だ。山内副本部長は「必要になったときに慌てて集めるのではなく、日頃からデータをシェアしておくことが常識となる世界が待っている。Snowflakeの活用によって、データコラボレーションによる新しいビジネスが生まれ、データの民主化が達成される」と語った。
スノーフレイクのパートナーとして、デロイトトーマツリスクアドバイザリーの朝日基雄・シニアマネージャーは、ESG経営におけるデータ利用の考え方を解説した。ESG経営の推進には、外部に対して成果を示すための実証的なデータが必要となるが、個社が単独で所有するデータだけでは信頼性を担保しにくい。朝日シニアマネージャーは、Snowflakeのようなオープンプラットフォーム上に集まったデータを組み合わせることで、より説明責任を果たせる環境が整うとした。今後のマーケットプレイスについては「データプロバイダーが多様化し、運用するプレイヤーがそろってくることでエコシステムは活性化する。スノーフレイクにはそのための仕掛けを期待したい」と求めた。
マーケットプレイス事業におけるパートナー戦略に関し、東條社長は、SIerやITコンサルティング企業だけでなく、データを提供する企業全てがパートナーになるとの認識を示し、幅広くエコシステムを拡充させていきたいとした。他方で、スノーフレイクではデータを活用するロジック(アプリケーション)の共有に向けても動いており、SIerら既存のパートナーが新たなビジネスモデルを得る機会が広がる可能性も秘めている。