富士通は5月24日、2025年度(26年3月期)を最終年度とする3カ年の中期経営計画を発表した。25年度に売上高にあたる売上収益を4兆2000億円(22年度実績3兆7137億円)、調整後営業利益を5000億円(同3208億円)、調整後営業利益率を12.0%(同8.6%)まで伸ばすことを目標とする。システム構築事業のうちハードウェア提供を除いた「サービスソリューション」事業を成長領域に位置づけ、積極的な投資を行う方針を示した。時田隆仁社長は「新たな中期経営計画に沿ってさらなる変革を進める。結果を出す準備は整っている」と力を込めた。
(岩田晃久)
時田隆仁 社長
新たな中期経営計画では事業セグメントを変更し、主力のシステム構築ビジネスである「テクノロジーソリューション」事業を、ハードウェアの販売・保守に関する「ハードウェアソリューション」事業と、それ以外の「サービスソリューション」事業に分ける。時田社長は「成長領域への投資や効果を明確にし、事業ポートフォリオのマネジメントを強化する」とセグメント変更の理由を説明した。
注力セグメントとなるサービスソリューション事業は、25年度に売上収益2兆4000億円(22年度実績1兆9842億円)、調整後営業利益3600億円(同1629億円)を目指し、調整後営業利益率は会社全体よりさらに高い15.0%(同8.2%)と大幅な成長を計画する。
急成長を実現する核となる戦略が、21年度に発表した事業ブランドである「Fujitsu Uvance(ユーバンス)」の伸長だ。同社はUvanceを、「コンピューティング」「ネットワーク」「AI」「データ&セキュリティ」「コンバージングテクノロジー」の五つをキーテクノロジーとして、「Sustainable Manufacturing」「Consumer Experience」など七つのエリアに対してサービスを提供するオファリング型の事業モデルと説明している。22年度実績ではUvanceの売上収益は2000億円だったが、これを25年度には7000億円まで拡大させるという。
磯部武司 CFO
磯部武司・取締役執行役員SEVP/CFOは「(世界共通の価値提供サービスである)グローバルソリューションが成長のドライバーとなる。23年度中にUvanceのラインアップが出そろうため、売上収益を拡大させる」と述べた。
国内事業では、引き続き企業のモダナイゼーションなどに取り組み、成長を見込む。一方の海外事業について時田社長は「以前からの大きな経営課題だ。ソフトサービスへのシフトが進んでいない」と現状を述べた。今後はUvanceを中心にオファリングサービスの拡大を進めテコ入れを図り「成長の軌道に乗せる3年間にする」(時田社長)とした。
中計では人材育成についての目標も示し、現在約2000人のコンサルタントを1万人まで拡大するとした。社員へのリスキリング、アップスキリングを強化する。また、米Microsoft(マイクロソフト)や米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)などとの戦略的アライアンスの強化を図る。
会見では、富士通Japanが自治体向けに提供する「Fujitsu MICJET コンビニ交付」のシステム不具合についても説明した。時田社長は「お客様をはじめ関係者に多大な心配、迷惑をかけており、深くおわび申し上げる」と陳謝した。再発防止に向け、最高品質責任者を新たに任命、システム品質の統制を仕組み化するほか、リスクコンプライアンス委員会で、具体策の決定から実行までを行うとした。