オービックビジネスコンサルタント(OBC)は、クラウドビジネスのさらなる発展を狙っている。10月に始まるインボイス制度と、2023年末で猶予期間が終了する改正電子帳簿保存法の二大制度改正をきっかけに、クラウドシステムの必要性が増すとみていることが背景にある。ビジネスを推進する上でかぎになるのは、オンプレミスシステムを利用する既存顧客のクラウドへの切り替えで、パートナーへの支援を強化して潜在需要の発掘・獲得に注力する構えだ。
(齋藤秀平)
和田成史 社長
企業にとっては、二大制度改正への対応が急務となっている。ただ、OBCは、過去に開催したセミナーで取得したデータから、対応済みの企業は20%未満にとどまり、65%以上がこれから対応を始めると分析。業務のデジタル化が進んだ場合、オンプレミスのままだと手作業による業務が増え、顧客の負担が増えると警鐘を鳴らしており、和田成史社長は、デジタル化の先にあるDXを実現するためには「クラウドでなければ難しい」との考えを示す。
OBCは、約9万社が導入しているパッケージソフトウェア「奉行10シリーズ」のサポート終了を24年4月に控えている。顧客へのアンケートでは、「奉行11シリーズ」とクラウドへの移行が半々となっているが、徐々にクラウドを選ぶ比率が高まっているという。
二大制度改正に加え、奉行10シリーズのサポート終了はクラウドビジネスにつながる可能性があるが、OBCは他社の動向に一定の警戒感を示している。特に新興SaaSベンダーは積極的なデジタルマーケティングを展開しており、顧客が能動的に動くと素早いアプローチが始まるため、先回りしてニーズを掘り起こすことが重要だとみている。
その上で、オンプレミスの課題に気づいていない顧客に早期にアプローチし、対話しながら解決策を提示する“深掘り提案手法”を活用するようパートナーに求めている。ハンズオンセミナーをクロージングの場として利用してもらったり、ターゲット選定などについて学べる深掘り提案手法の習得勉強会を開催したりしてパートナーを支援する方針だ。
製品については、中小企業向けの「奉行クラウド」と、主に中堅企業向けのSaaS型ERP「奉行V ERPクラウド」などの機能を拡充している。このうち、「奉行クラウドEdge」では、幅広い形式の請求書を受領し、支払業務を支援する「支払管理電子化クラウド」を6月12日に発売した。
市場では、二大制度改正の需要の取り込みに向けて、他社も支払管理電子化クラウドと同じような製品を提供している。製品の優位性について、和田社長は「支払処理を含めて債務の業務フローをしっかり回せることが他社の製品との違いだ」と強調し、既存顧客を中心に導入の拡大を目指すと説明する。
一方、奉行V ERPクラウドでは、ノーコード・ローコードツール7社との連携を開始したほか、コンバートツールの提供なども進めており、「つながる」をキーワードにビジネスを本格化させる方針。24年4月には「奉行V ERP11」との機能差を解消する見通しだ。
和田社長は、二大制度改正によって「マーケットが大きく変わろうとしており、各企業のシステムのクラウド化に拍車がかかることが期待できる」とし、「パートナーに対して安心してサービスが販売できる環境を提供し、これからも100%パートナービジネスを実現していく」と意気込む。