アイティフォーは決済サービスやコンタクトセンター領域で新規商材を投入する。決済サービスでは広告表示や割引券発行が可能な新型端末を順次取り入れ、同社が長年培ってきた小売りや顧客分析のシステムと連動させるなどして店舗の売り上げを増やすサービスを提供する予定だ。コンタクトセンターではイスラエルNICE(ナイス)社のクラウド型コンタクトセンター「CXone」を取り扱う。また、ブロックチェーン技術を活用した新規事業として「デジタル金庫」サービスの立ち上げにも取り組む。
佐藤恒徳 社長
新型端末は、Android OSを搭載する「SATURN(サターン)」で、ディスプレイに広告を表示したり、顧客属性に合った割引券を発行したりして再来店につなげる機能を実装している。アイティフォーは小売業向け基幹業務システムやネット通販システムを独自に開発してきた実績を持っていることから「購買や顧客情報をもとにしたデータ分析を行い、小売店の売り上げや利益を増やす支援サービスを拡充していく」(佐藤恒徳社長)方針だ。
地方の金融機関とクレジットカード会社の主に二つの販売チャネルを持つ。金融機関のチャネルでは琉球銀行や千葉銀行、飛騨信用組合など6金融機関が端末を取り扱い、地域の商店街に多様なキャッシュレス決済を普及させることで、地域経済の活性化を図っている。
2019年3月期の決済端末の累計販売台数は1万台に満たなかったが、販売チャネルの整備に伴って23年3月期には累計11万6000台余りを販売している。SATURNの投入によって販売に弾みをつけていく考えだ。
クラウド型コンタクトセンター「CXone」は、ホテルや旅館の受付業務など比較的小規模な案件で強みを発揮するとみている。SaaS型で導入に手間がかからず、在宅勤務を含めて場所の制約を受けずに受付業務ができることを訴求して、人手不足に悩むユーザー企業の課題解決につなげる。本年度中にも「第1号ユーザーの受注を見込んでいる」(同)と手応えを感じている。
デジタル金庫ではブロックチェーン技術で自治体と金融機関、利用者を連携させることを想定している。例えば終活の一環で遺書を電子文書化してデジタル金庫に保管。本人が亡くなった際に自治体や相続人、金融機関で遺書情報を共有してスムーズに相続手続きが行えるようにする。23年5月に熊本県主催の公募型企画コンペに採択され、実用化に向けた実証実験を行っている。
23年3月期の業績は売上高、利益、受注高など主要項目で過去最高を更新。営業利益については24年3月期までの3カ年中期経営計画を1年前倒しで達成している。自社が強みとする事業領域や隣接する領域に新規商材や新規事業を積極的に投入していくことで成長を持続させていく。
(安藤章司)