freeeは8月24日、SaaSで提供する統合型ERP「freee統合型ERP」の販売を開始したと発表した。これまで提供してきた会計ソフト「freee会計」と労務管理ソフト「freee人事労務」、販売管理ソフト「freee販売」を統合するとともに、プロダクト間の連携機能を追加することで実現した。これまでERPの導入が難しかった中小企業向けに拡販する。
(大畑直悠)
freee統合型ERPは、各プロダクトが一つのプラットフォーム上で動作し、売り上げ・入金情報や経費・給与情報、従業員の工数などを管理できる。共通のデータベースを参照するため、ソフトウェア間でマスターデータを転記する必要がなくなり、業務を効率化できる。パッケージで提供するため、中小企業でも低コストで導入できることが強み。顧客の要望に合わせて、業務定義などのコンサルも含めた導入支援を提供する。
東後澄人 CPO
連携機能が特徴で、freee販売とfreee人事労務、freee会計の連携により、原価や工数、人件費を含めた案件原価を可視化したり、経費情報を案件原価に自動で反映させたりできる。加えて売り上げ・入金情報の連携による案件別の収支管理や、社内外の支払い・請求の連携による入出金管理も可能になる。
同社の東後澄人・CPOは「案件ごとの粗利計算が容易にできるようになる。最新の工数を把握することで、見積もりを超過し、請求後に赤字だったという事態を避けられる」とアピールした。
今後は、有形商材を扱う事業者向けの機能拡充を計画しており、同社が運営する透明書店で試験運用中の在庫管理機能を実装する予定。また、営業支援機能や顧客関係管理機能について、外部との連携も視野に入れながら機能拡充を模索するとした。
販売戦略としては、連携機能を訴求して既存顧客に導入を促す。東後CPOは「基幹システムをいきなりすべてを変えることはハードルが高いが、入り口は多様だ。インボイス制度への対応を機にfreee会計から導入し、徐々に広げていくなど、さまざまな切り口で拡販する」とした。
さらに「これまで強みとしてきた会計や人事労務といったバックオフィス機能に加え、昨年11月のfreee販売の提供を機に、営業のフロントオフィス面での引き合いも増加している」と説明し、freee販売の提案から新規顧客の獲得につなげていく考えだ。
パートナーによる代販にも力を入れる。大手代理店が代販するfreee会計とfreee人事労務のラインアップにfreee販売も加え、その後、freee統合ERPも追加する予定だ。
東後CPOは「これまでERPは、中小企業にとってはコスト面でハードルが高く、大企業だけが使えるものだった。その結果、中小企業には紙や表計算ソフトに依存したオペレーションが残り続け、生産性の向上が難しかった」と製品提供の背景を解説し、「大企業が使うERPと遜色ない機能をスモールビジネスでも活用できる。ビジネスのあらゆる業務がfreeeを利用することでシームレスにつながり、一つのソフトウェア上で完結できる世界を目指す」と意気込んだ。