富士通は米Salesforce(セールスフォース)製品によるマーケティング・オートメーション(MA)事業を強化している。2023年12月にはセールスフォースのMAビジネスで国内トップクラスの実績を誇るtoBeマーケティングを完全子会社化。富士通が以前から得意とするSFA・CRM領域とMA領域を組み合わせた提案を充実させ、ビジネス拡大へとつなげる。両社のシナジーを発揮し、セールスフォースビジネスでグローバルトップ10を目指す。
(左から)富士通の植木誠二郎・事業部長、
toBeマーケティングの小池智和CEO、富士通の塩田好伸・シニアディレクター
富士通は現在注力している事業ブランド「Fujitsu Uvance」で、セールスフォース事業を重点分野である「Business Applications」の一要素と位置付けている。一方で、今後のさらなる発展を見据えたとき、SFAやCRMは強みとしていたものの、MAに関しては「ケイパビリティーが非常に薄く、自分たちで一からつくりあげるイメージを持てなかった」(富士通Salesforce事業部の植木誠二郎・事業部長)ことから、M&Aによる強化を模索していた。
toBeマーケティングは15年に創業し、セールスフォースのMA製品の黎明期から導入・活用支援を専門として、これまで大手、中堅・中小を問わず2000社以上の顧客を手掛けてきた。富士通にとってはMA領域のパートナーの1社であり、ともにビジネスに取り組んだ経験も多い。toBeマーケティングの小池智和CEOは「上場に向けた準備も進めていたが、顧客やリソースを持っている大企業と組むほうがより成長ができる」と判断。双方の得意領域を掛け合わせることで、一体的な提案の充実や、案件の大規模化、グローバルビジネスの促進につながる点もグループ入りを後押しした。
toBe社のグループ入りは市場からの認知面でも有利に働くとみる。富士通Salesforce事業部の塩田好伸・プロフェッショナルチームシニアディレクターは、BtoC領域を中心にマーケティングビジネスでは競合に水をあけられているとし「『マーケティングといえば富士通』となるようにしたい」と意気込む。
セールスフォースは近年、「Salesforce Customer 360」という概念を打ち出し、横断的に活用できるデータ基盤「Data Cloud」を中核に、さまざまなプロダクトを一元的に運用・管理することで、全方位的に顧客体験を最適化する世界を目指している。ただ、国内ではこのコンセプトにワンストップで対応できるパートナーはまだ少ないという。植木事業部長は「お客様が(パートナーと)一緒にジャーニーを歩めないという課題感を克服できる」と強調する。
(藤岡 堯)