SCSKは、製造業や通信、流通小売といった一般産業や自動車向けなどのシステム構築(SI)で生成AIを積極的に活用している。一般産業向けSIの事業部門は約25チームから編成され、SIサービスを担うチームは、1プロジェクト以上で生成AIの活用を必須目標に据える。「本年度中にすべてのチームで生成AI活用を経験してもらう」と高橋竜太郎・産業事業グループ統括本部本部長付は話す。自動車向けでは電子制御ユニットシステムの国際規格AUTOSARに準拠したSCSK独自の組み込みソフトサービス体系「QINeS-BSW」関連ビジネスへの応用を進める。
左から横山祐介氏、高橋竜太郎本部長付、大塚高廣課長
生成AIの活用を目標に掲げる一般産業向けSIチームでは、要件定義やプログラム生成、テスト工程などさまざまな用途で応用が進んでおり、本年度は「30プロジェクトほどに活用できる」(高橋本部長付)とみている。
自動車向けではQINeS-BSWを使ったソフト開発を機械化、自動化する用途に加え、AUTOSAR関連の膨大な資料の検索や、安全基準に準拠した品質が担保されているかどうかを複数のAIエージェントに読み解かせ、「各AIエージェントが導き出したレビューを照らし合わせて精度を高める手法の確立」(大塚高廣・技術戦略本部デジタル推進部開発第一課課長)を目指す。将来的には外部ネットワークと接続するコネクティッドカーや、高度な自動運転の大規模ソフト開発への応用も念頭に置く。
生成AIの活用に際しては、「手作りのシステムを機械化、自動化することによる生産性の飛躍的な向上」(技術戦略本部戦略企画部技術企画課の横山祐介氏)に主眼に置く。これまでもローコード開発ツールなどを駆使してきたが、ローコード開発ベンダーの専用基盤を使わなければならない縛りがあった。生成AIは複数ベンダーのAIエンジンをプログラム開発やテスト工程に使えるばかりでなく、要件定義の際に作成する「用語集」を大規模言語モデル(LLM)によって生成するなど、自由度の幅が広く制約が少ない利点がある。
LLMによる用語集の作成では、完全に100%正しいとは限らないため、設計書や仕様書の根拠となる部分にリンクを張らせ、後から人の目で確認することで正確を期す。
今後は金融や公共などの業種ユーザー向けのさまざまなSIプロジェクトに生成AI活用を推し進めて生産性を高める方針だ。
(安藤章司)