アマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン(AWSジャパン)のパートナー企業であるヘプタゴン(青森県三沢市)、エイチビーソフトスタジオ(松山市)、Fusic(福岡市)の3社はこのほど、地方におけるクラウド活用を推進する企業間コミュニティー「re:light local」を設立した。ヘプタゴンの立花拓也社長は「大都市圏では集まらない地方ならではの事例を共有する場をつくり、クラウド活用を加速したい」と意気込む。
(大畑直悠)
ヘプタゴン 立花拓也 社長
re:light localは地方に拠点を置くクラウドの専門家やユーザー、開発者のハブとなることを目指すコミュニティーだ。主な活動方針としては、各地域でイベントを年4回実施し、地場のIT企業やDXに取り組みたい事業会社を招いて知見や事例を共有できる場を創出する。2024年度の目標としては、北海道や北陸、中部、中国などで中核となるような参画企業の獲得を掲げるほか、教育機関との連携も視野に入れる。
24年2月には1回目のイベントを仙台市で開催し、40人の参加者を集めた。AWSジャパンの担当者による講演やエンジニア向けのハンズオンなどを実施。立花社長は「『下請けのビジネスから脱却したい』といった地方の開発会社で共通する問題意識が明らかになった」と手応えを示す。
コミュニティー設立の理由について、立花社長は「地方でクラウド活用の支援を進めていると、東京をはじめとした大都市圏の事例をまねしてもうまくいかないケースが多く、地方の企業同士が直接つながり情報交換できる場の必要性を感じた」と説明する。人材不足も地方の課題と指摘し、クラウドを活用したビジネスを推進したい開発会社向けの人材育成なども視野に入れる。立花社長は「エリアごとにクラウド活用の旗を振るCCoE(Cloud Center of Excellence)を設けていくイメージだ」と説明する。
地方におけるクラウドの活用支援の進め方の特徴として、立花社長は「地方企業には情報システム部門がないことが多々あり、より現場に近い方々とやり取りする中で課題を発見し、われわれが主導して仕様をつくる必要がある」と指摘。その上で「地方でもクラウドへの理解は高まっていると感じるが、だからといって案件が増えているという感覚はない。顧客は何を使うかではなく、課題が解決できるかを重視している。逆に言えば課題解決の道筋が立てば、比較的レガシーなシステムが少ない分、初めからサーバーレスや先端テクノロジーに最適化されたシステムを導入しやすいのが地方の強みだ。実際にAIを活用して、急激にDXを進めた事例が地方には多くある」と強調する。
立花社長は「地方は少子高齢化などの課題が顕在化しやすく、大都市圏で5年後10年後にやってくる問題が先行して表面化する傾向がある。コミュニティーを通して地方の課題を解決するノウハウを蓄積しておけば、将来的には大都市圏を含む日本を動かすような取り組みになるだろう」と展望する。