ラクスは12月12日、バックオフィス向けSaaS群「楽楽シリーズ」におけるAI機能の導入を本格化する。当面は経費精算の「楽楽精算」での展開を推進し、2025年9月にも、勘定科目の入力補助機能を追加する予定だ。29年3月期までに申請内容のチェックや使用規定違反の検知、自動承認・否認などの各種機能を加える。全ての機能が導入されれば、経費精算作業の月間平均時間を約90時間削減できると見込む。同社は経理担当者が予算管理といったコア業務に専念できる環境づくりを支援し、顧客の成長に寄与したい考えだ。
ロードマップでは、25年3月期から26年3月期を「フェイズ1」と位置付け、チェック作業の削減に注力する。まずは利用人数が多く、頻度も高い経費申請の入力、承認に関する課題の解決から着手する方針で、勘定科目の入力補助機能のほか、申請前の不備や申請内容の確認、承認フローの適切化などを計画する。その後、27年3月期から29年3月期の「フェイズ2」では、経理担当者側の業務に焦点を当て、規定違反や目的が不明瞭な申請の検知、AIによる自動承認・否認機能などの開発を予定する。
吉岡耕児 執行役員
同社によると、AI機能によって、楽楽精算を使用した場合の1社あたりの経費申請作業時間(月間平均)は、現行の約149時間から約59時間にまで短縮できる。12日に都内で開いた説明会で、執行役員の吉岡耕児・楽楽クラウド事業本部本部長は、経理担当者は経費精算などのノンコア業務に追われ、予算や業績の管理、決算業務といった経営判断に関わるコア業務に十分な時間を割けないことが大きな課題になっていると指摘。AI機能を通じて「経理業務を継続的に支援し、企業の成長に貢献したい」と説明した。
既存ユーザーの場合は過去の履歴データなどを活用し、顧客の慣習などに応じて学習させ、精度をより高められるとする。新規ユーザーに対しては、実証実験の中で、顧客の手元にあるデータから学習データをつくる方法を検討している。
AI機能の追加に伴うユーザー負担については、基本機能に組み込んだり、またはオプションとして有償提供したりなど、複数のパターンが想定され、現在検討を進めている。吉岡執行役員は「一つ一つの業務改善の幅を踏まえ、お客様に提供できる価値を価格に転嫁できるかを慎重に判断したい」と話した。AI機能そのものによる増収効果ではなく、機能拡充をドライバーとした導入企業数の拡大に期待しているという。
楽楽精算以外の製品でも、今後AIを含めた機能拡充を積極的に進める考えで、吉岡執行役員は「バックオフィス支援の領域で最も頼りにされる存在を目指す」と意気込んだ。
(藤岡 堯)