KDDIは1月21日、通信を製品やサービスと組み合わせて提供する法人向けの新サービス「ConnectIN(コネクティン)」の提供を開始した。PCにeSIMを搭載し常時接続できる利便性によって、生産性向上を目指す企業をターゲットに、PCと回線のセット販売で通信のシェア向上を目指す。同日はDynabookがコネクティンを採用した通信費込みの法人向けPCを発表したほか、PCメーカーなど4社も採用を決め、近く新製品を発売する見通し。
(堀 茜)
KDDIは、スマートフォンでeSIMが浸透し、エッジAIの活用がさらに進むと見込まれる市場環境の中、PCでも安定した常時接続に対するニーズは高いと分析。サービス開始に先立ち、日本HPが2023年11月、通信を5年間使い放題にした法人向けPCを発売した際に、MVNOとしてau回線を提供。手応えを得たことから本格的にサービスを開始した。
コネクティンは、PCなどのメーカーが製品に通信機能を内蔵する際に必要となる通信回線の手配、運用、システム開発などの工程をKDDIが提供。メーカーは初期投資を抑えて通信一体型の製品を開発できる。KDDIは、販売台数に応じて事前に利益配分を契約するレベニューシュアによって収益を確保する。
KDDI
那谷雅敏 執行役員常務
会見した執行役員常務の那谷雅敏・ビジネス事業本部副事業本部長は「PCと通信を一体化することで利用者にとって利便性が向上し、製品の付加価値が高まる」と説明。これまで通信費は月額で支払うのが一般的だったが、コネクティン対応製品はエンドユーザーが月額の通信費を支払う必要がない新しいビジネスモデルになるとした。
コネクティンを採用したMVNOサービスとして、Dynabookは「dynabook eSIM Startin'」を開始し、eSIMに対応した5G/LTE(4G)対応の通信モジュール内蔵モデル「dynabook X83/LY」を発売した。au回線のデータ通信が4年間無制限で利用できる。ユーザー企業は、端末購入時に4年間の通信費も一括経費計上でき、PCと通信環境を個別に手配するより大幅に費用を抑えることができるとした。Dynabook常務執行役員の渋谷正彦・国内PC事業本部長は、「AI時代におけるモバイルPCの可能性を広げるサービスだ」と期待を寄せた。
コネクティンのPCへの採用は、VAIO、レノボ・ジャパン、パナソニックコネクトが決定しているほか、ダイワボウ情報システムも自社開発のPCに搭載する。
KDDIによると、PC市場全体でeSIM搭載の製品割合は10%未満。コネクティンにより裾野を広げ、eSIM搭載PCのシェア8割を獲得したい考え。「コネクティンの事業売り上げで早期に100億円を目指す」(那谷常務)とした。
那谷常務は「通信を部品として、あらゆる製品やサービスにコネクティンを搭載してもらい、製品を買えば通信がセットされている世界を目指していく」と展望。今後PCに限らず多様な製品にコネクティンを搭載していきたいとの考えを示し「監視カメラや信号など、いろいろなメーカーに検討いただきたい」と述べた。