米Nutanix(ニュータニックス)は5月7~9日(米国時間)の3日間、米ワシントンD.C.において同社の年次プライベートカンファレンス「.NEXT 2025」を開催し、グローバルから約5000人のユーザーやパートナーがこれに参加した。7日に行われたオープニングキーノートには、同社CEOのラジブ・ラマスワミ(Rajiv Ramaswami)氏が登壇し、米VMware(ヴイエムウェア)の製品からの移行案件を強く意識した新たなパートナーシップや、2年前の「.NEXT 2023」で発表したビジョン「Project Beacon」に沿ったクラウドネイティブなソリューションを発表した。同社は、今回のカンファレンスのテーマとして「Run Anything Anywhere」を掲げており、その実現に向けて着実に前進している姿勢を強調した。
米Nutanixのラジブ・ラマスワミCEO。
カンファレンスのテーマには「Run Anything Anywhere」を掲げた
ニュータニックスは現時点の製品戦略として「インフラのモダナイズ」「モダンアプリケーション」「エンタープライズAI」を挙げているが、今回のカンファレンスで発表された内容を見ると、「VMware環境からの移行をサポートするインフラの整備」「ハイブリッド/マルチクラウドを前提にしたシームレスなKubernetes環境の拡張」「エージェントAIの本番環境構築」によりフォーカスする方針だといえる。なお、オープニングキーノートで発表された主なアップデートは以下となる。
[外部ストレージ]
2024年5月に発表した、米Dell Technologies(デル・テクノロジーズ)のソフトウェアデファインドストレージ「PowerFlex」サポートの一般提供(GA)
米Pure Storage(ピュア・ストレージ)とのパートナーシップにより、同社のオールフラッシュストレージ製品「FlashArray」のNCI(Nutanix Cloud Infrastructure)によるサポートを2025年夏からアーリーアクセス開始、GAは25年内を予定
[新パートナー]
デスクトップ仮想化基盤の「Citrix」および「Omnissa」、エンタープライズLinuxの「Ubuntu」
[マルチクラウド]
「Amazon Web Services」(20年)、「Microsoft Azure」(22年)に続き、「Google Cloud」のベアメタルサービス上でNC2(Nutanix Cloud Clusters)をサポート(GAは25年内を予定)
[コンテナ/Kubernetes]
クラウド/オンプレミス(ベアメタル含む)/エッジなどあらゆるKubernetes環境で動作する「Cloud Native AOS」を発表、現時点ではAmazon EKSでのアーリーアクセスのみ提供、オンプレミス/コンテナ向けは25年内での提供を予定
[エージェントAI]
24年11月にGAとなった「Nutanix Enterprise AI(NAI)」ソリューションに「NVIDIA NIM」マイクロサービスや「NVIDIA NeMo」フレームワークなどを含む「NVIDIA AI Enterprise」を統合、エージェントAIアプリケーションを構築/実行する基盤を強化
これらの中でも特に注目されたニュースが、外部ストレージの選択肢として新たにピュア・ストレージのFlashArrayシリーズが加わったことだ。VMwareユーザーは外部ストレージ機器を日常的に利用しており、サーバー内部のストレージがメインのニュータニックスにとってはそのことが移行を妨げる要因のひとつとなっていた。今回、昨年発表のDell PowerFlexのGAとともに、FlashArrayのサポートが明らかになったことで、VMwareからの移行を検討する企業にとってニュータニックス製品が有力な選択肢となる機会が増えることになる。
Pure Storage FlashArrayシリーズのサポートを発表。
VMware環境からの移行を検討するユーザに対して、
外部ストレージのサポートを強化していることを強調
ニュータニックスで製品/ソリューションマーケティングを担当するリー・キャスウェル・シニアバイスプレジデントは、外部ストレージサポートの拡張について「ニュータニックスのHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャー)と外部ストレージが、今後数年にわたって共存できるというビジョンを証明する良い機会」と語っており、自社のハイパーバイザーに依存しないアーキテクチャを推進していく方針をあらためて示している。また、ピュア・ストレージのストレージ製品はAIワークロードに最適化された設計となっており、ニュータニックスがターゲットとしている、オンプレミスのプライベートAI環境構築を望むユーザに対しても、ユニークな顧客体験を提供することが期待される。
また、新たなパートナーシップとしてGoogle CloudのベアメタルサービスでのNC2の提供や、米Broadcom(ブロードコム)傘下となったVMwareから独立したEUC(エンドユーザコンピューティング)ソリューションの米Omnissa(オムニッサ)、デスクトップ仮想化(VDI)市場で高いシェアを誇る製品のCitrix、エンタープライズLinuxにおけるシェアを拡大しつつある英Canonical(カノニカル)との提携が発表されており、ハイパーバイザーの有無にかかわらず、あらゆるワークロード/アプリケーションを顧客が望む環境で動かすという「Run Anything Anywhere」のコンセプトをパートナーリングにも拡大していることがうかがえる。
これまでも協業関係にあったGoogle Cloudのベアメタルサービスで
NC2をサポートすることを発表
キャスウェルシニアバイスプレジデントは「昨年(24年)の.NEXTでスポンサーとして参加したパートナーは50社だったが、今年は80社にまで増えた。ニュータニックスのビジョンに共鳴するパートナーが確実に増えていることをうれしく思う」と語っており、今後もパートナーエコシステムの拡大に積極的に臨むとしている。
東芝がVMware環境からの大規模移行を明らかに
今回のカンファレンスで注目を集めた事例のひとつに、東芝がVMware環境をニュータニックスへ移行することを決定したというニュースがある。同社は25年10月から約2年をかけて2200台の仮想マシン(VM)を移行させる予定となっており、この規模の移行案件を明らかにしたのは日本企業としては東芝が初となる。
もっとも、ニュータニックスはグローバルですでに多くの大規模移行を成功させており、なかには2万4000台のVMを移行させた金融機関の事例もある。2200というのは決して大きすぎるとはいえない規模ではあるが、ラマスワミCEOは「東芝のケースはコンサバティブといわれてきた日本市場が確実に変わり始めたことを示すものだ」と、同社の決断を高く評価している。
「3年前に日本に行ったときは我々の話を聞いてくれる企業はごくわずかだった。だが今年の4月に日本に行ったときは、非常に多くのユーザー企業やパートナーから話をしたいという連絡が向こうから来た。日本企業は変わらないと言われているが、変化のスピードが若干異なるだけで、確実に変わってきていると実感している」(ラマスワミCEO)
.NEXT 2025の詳細レポートは近日中に本誌にて掲載する予定だ。
(五味明子)