KDDIは10月28日、グーグル・クラウド・ジャパンとAIサービスの提供を目的とした戦略的協業を締結したと発表した。米Google(グーグル)の生成AIモデル「Gemini」やAIアシスタントツール「NotebookLM」を活用し、コンテンツプロバイダーの権利を保護しながら顧客が信頼性の高い情報を取得できるAIサービスを2026年春に提供を開始する。
提供するAIサービスは、ニュースサイトや不動産情報サイトなどを運営するパートナー企業から提供を受けた情報をAIが読み込み、顧客は知りたい情報を文章や音声で収集できるようになる。
松田浩路社長CEOは、同日都内で開催した法人向けイベント「KDDI SUMMIT 2025」で新たに提供するAIサービスについて説明した。現在のAI検索サービスの課題として、利用者側は生成された情報が正しいのか分からない点、コンテンツを制作する側は自社の情報を無断利用されているとの懸念がある点を指摘。「当社の技術力で、コンテンツとグーグルのテクノロジーをインテグレーションし、利用者にもコンテンツプロバイダーにも価値があるサービスを提供したい」と展望した。
KDDIの松田浩路社長CEO
AIサービスの提供開始を前に、同社は大阪・堺市で「大阪堺データセンター(DC)」を26年1月下旬から本格稼働させる。米NVIDIA(エヌビディア)製のGPU 「GB200 NVL72」などを搭載した計算力の高い最新世代AIサーバーを運用。企業向けにGPUリソースを提供するほか、Geminiのオンプレミスサービスなどパートナーとの協業を通じたAIサービスの開発・提供に活用する。
また、同DCの計算力を活用し、GPUクラウドサービス「KDDI GPU Cloud」の提供を開始することも発表した。26年4月から利用申し込みを開始する。サーバーを1台単位からクラスタ単位までオンデマンドで利用可能で、顧客は必要な計算リソースを初期投資不要でいつでも利用できる。
松田社長は同DCについて、直接液体冷却の技術を導入し水冷方式に特化した設備を、シャープの工場跡地を活用することで早期に稼働までこぎつけたと経緯を紹介。「データを国内に置いておきたいというニーズは高い。ソブリン性を担保する施設で、当社の得意分野であるネットワークを組み合わせ顧客に価値感じてもらう」と述べた。(堀 茜)