上場企業などが対象となる新リース会計基準の適用が2027年4月、開始される。使用権資産やリース負債を貸借対照表(バランスシート、BS)に計上することが求められ、サーバーなどIT機器も対象になるケースがある。経理に特化したAIソリューションを展開するファーストアカウンティングの森啓太郎社長は「ITシステムの提案方法にも影響する制度変更で、より企業の利益に資するような提案が求められる」と提言する。
森 啓太郎 社長
新リース会計基準は、16年に改正された国際会計基準に準拠している。日本企業も海外から投資を受ける中で、他国と同等にリース資産をBSに計上する必要性があるとの認識に基づく。
BSに計上する資産かどうかを判定する際に指標となるのが、「指図権」の有無だ。同社によると、例えばサーバーの場合、構成を顧客側が指示して自由に変更できる場合は指図権が顧客側にあり、リース契約であっても保有と同様にBSに計上する必要があるが、構成やサーバーのメーカーなどをベンダー側が決めるマネージドサービスの場合は、計上する必要はないという。
これまでBSに計上されていなかった多くのリース契約がBSに計上された場合、ROA(総資産利益率)、ROIC(投下資本利益率)、自己資本比率といった数値の悪化につながる可能性があるため「企業の経営層はどの程度リース資産をBSに計上しなければならないのか非常に敏感になっている」(森社長)という。
森社長は「新リース会計基準の開始が、ITシステムの売り方にも一石を投じる可能性がある」との見方を示す。ITシステムを使う顧客側は、求めるパフォーマンスが確保されていれば、オフバランスできるほうが会計や経営への影響が少なくなるとして選ばれる可能性が高いと指摘。新リース会計基準は、企業にとって逆風に見える側面もあるが、販売する側にとっては、どのような提案ができるかでビジネスチャンスが広がる可能性もあるとする。オンプレミスのERPはオンバランスでも、クラウドにすればオフバランスにできるケースも考えられるとし、「同じシステムでも、制度にのっとった上でオフバランスで使える提案をすれば顧客の利益になり、案件を獲得できる可能性がある」(森社長)。また、ITシステムの保守費用はオフバランスできるため、保守費用を切り離して提案することで、BSに計上する額を少なくすることも、有益な選択肢になるという。
同社は、膨大な契約書の中からリース取引の有無を確認し、契約書の内容を精査して新基準に該当するかどうか専門的な判定を行う部分をソリューションで支援している。この作業は新リース契約への対応にあたって企業が苦慮する部分だと見込まれる。弁護士ドットコムと協業し、同社の電子契約サービス「クラウドサイン」で全ての契約書をデジタル化し、ファーストアカウンティングの経理AIエージェントがリース取引に該当するかを自動判断することで、一連のプロセスに一気通貫に対応する。
今後、新リース会計基準への対応を強化するため、ほかの契約書管理システムやERPベンダーとも連携を進めていく方針だ。
(堀 茜)