東芝は、電子レシートサービス「スマートレシート」に蓄積された購買ビッグデータを活用し、新商品の販売数量を高精度に予測するAIを開発した。消費者の嗜好が多様化し、市場環境の変化が激しくなる中、企業規模を問わず活用できる技術として、2027年度中のサービス開始を目指す。
宮崎知弘 部長
スマートレシートは東芝テックが開発・運営するサービスで、スーパーやドラッグストアなど複数業態にまたがる購買データを収集している。東芝の宮崎知弘・データイノベーション推進部長は、「スマートレシートのデータは300万人規模で、流通を横断して長年蓄積している点が強みだ。1社に偏らないデータで幅広い予測が可能になる」と説明する。
こうしたデータを活用し、東芝は購買ビッグデータ向けに独自のクラスタリングAIと生成AIを組み合わせた販売予測技術を開発した。クラスタリングAIが、誰が何を購入したかというレシートデータから購買パターンの似た消費者を自動的に分類し、生成AIがグループごとに新商品への反応を推定する。これにより、多様化する嗜好を反映した需要予測を実現する。
中田康太 フェロー
従来の生成AIを用いた予測では、全データを一度に処理することが難しく、頻出データに偏る傾向があった。一方、消費者一人一人を対象にしたシミュレーションは計算量が膨大となり、実用化のハードルが高い。これに対し、今回の手法は「グループ単位」での予測により、計算負荷を抑えながら多様な嗜好を反映できる点が特徴だ。開発を担当した総合研究所の中田康太・フェローは「ビッグデータに含まれる多様な購買をどう予測に反映するかが課題だった」と振り返る。
評価実験では、カップ麺の購買データ約9万6000人分を用いて検証し、販売数量の予測誤差を従来手法に比べて約23%低減した。グループ化によって、辛い味を好む層など少数派の嗜好も反映でき、平均的な値に寄りがちな従来の予測精度を改善した。
今後は対象商品や期間を拡大し、精度や実用性の検証を進める。メーカーの新商品開発にとどまらず、小売事業者への展開も視野に入れる。
(山本浩資)