Break it! ソフト流通百景

<Break it! ソフト流通百景>25.ベクター(上)

2001/12/24 16:18

オンライン販売は今

 オンラインソフト販売を行うベクターは、今年度(2002年3月期)の9月中間決算で、営業収益が前年同期比63.9%増の5億1900万円、経常利益では同1619.1%増の5800万円と順調に業績を伸ばしている。

 同社の梶並伸博社長は、理論的にダウンロード販売の優位性をアピールする。

 「97年に、パソコンソフトにはダウンロード販売が適しているという話を書いたことがあったが、今も同じように感じている」

 梶並社長によれば、パソコンソフト販売をオンラインで行うことが適している理由として、まず販売側からの視点3点を挙げる。

 (1)書籍に比べ市場規模が小さいため、パソコンソフト販売は書店の売り上げに比べると1販売店当たり年間1000万円程度にしかならず、ソフト専門店が成立しない、(2)書籍のように再販制度がなく買い取りが前提のため、販売効率を上げるために余分な商品を並べることができず、売れ筋商品しか並べられない、(3)長期的に単価下落傾向が続いている。

 さらに、商品を購入する顧客の問題として、(1)情報が少なく、どんなソフトがあるのかわからない、とくにパソコン雑誌を読まない初心者ユーザーが増加している現状ではその傾向がさらに顕著、(2)買って実際に使うまで中身がわからないため、購入リスクが高い、(3)販売する店が限られているので、欲しい時に買えない──の3点を指摘する。

 「オンライン販売は、顧客側の問題に関しては、商品一覧で探すことで欲しい情報に行き着ける。トライアル版があるため、試してから購入できるので、購入リスクが低くなる。さらに、ECは欲しい時に商品を購入できるので、購入場所が限られているという問題を回避することができる」

 メーカーがよく口にする店頭でのパッケージ販売のメリットについても、「パッケージソフトを店頭で販売することによる宣伝効果はもちろんあるが、目につく所に置かれる商品は人気が高いものに限られている。売れ筋商品以外のものに関しては、宣伝効果があるような陳列はされない。つまり、特定の売れ筋商品に関しては店頭で販売するのが向いているが、それ以外の商品はむしろオンライン販売の方が適している」と、その利点をすべてのメーカーが生かせるわけではないと指摘するのだ。

 その実例として、「かつては店頭でたくさん販売されていたテキストエディタ、最近店頭では見かけないでしょう。しかし、ダウンロード販売では結構人気がある。店頭よりもチャンスが広がる部分だって逆にある」ことを挙げる。

 確かに店頭で販売されるパッケージとしては市場性がないと判断されているジャンルの商品でも、オンラインの世界では人気があるというケースも少なくない。

 もちろん、オンラインが万能というわけではない。昨年は大きな話題を呼んだASPについて、「比較対象がダウンロードの場合と違い、ハードディスクへのアクセス速度と同じレベルが求められるので、技術的に考えて実現は現状では難しい。ソフトをインストールする手間がなくなることを考えれば市場性は十分あるが、LANならともかくWAN環境で、シンクライアントがサーバーにあるソフトにアクセスして利用するというのは将来になるのではないか」と冷静に判断している。

 この辺りが、梶並社長が他社に先駆けてネットワーク販売事業を成功させている要因だといえるだろう。(三浦優子)
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