回収達成率80%が合格点

 「産構審(産業構造審議会)のパソコンリサイクル検討会で、ほかの委員がパソコン業界に無理難題を押しつけていると思い込むのは大きな間違い」と話すのは、消費者を代表する委員の1人である富士常葉大学環境防災学部の松田美夜子助教授。「リサイクルは、最終的には生産活動をする業界が責任を負う。私たち業界外の委員は、業界に対して助言をする立場にあるだけ。しかし、どうもパソコン業界は意固地で困る」と漏らす。

 「これまでの容器包装や自動車、家電リサイクルの場合、産構審で議論を進めるうちに業界内にリサイクルの意識が広まり、最終的には業界側が非常に前向きに取り組むようになった。こうした検討会は、毎月1回の“お勉強会”のようなもので、われわれ委員の多くは、業界の啓蒙係として活動を続けている。なのに、大手電機メーカーも家電リサイクルのときはとても紳士的だったのに、パソコンリサイクルとなると強情っ張りで驚いた」と打ち明ける。

 「家電リサイクルのとき、いちばん強行に反対したのは、何を隠そう販売店だった。結局は業界側の要望通り、排出時徴収で決まった経緯がある。それが、今では日本電気大型店協会(NEBA)の岡嶋昇一会長自身が、当初、私たちが提案していた販売時原価織り込み方式を支持している。排出時に伝票を切る大変さと、中古リサイクルが進まない欠点に気づいたからだ。パソコンでも基本的に、製品価格の中にリサイクル費用を織り込むのがいちばん分かりやすくて簡単。メーカーはどうも気づこうとしない。きっと昨年、これまで売れてきたパソコンが売れなくなったから、精神的にゆとりがなくなっているのかも…」と溜息をつく。

 「これは非常に危険なこと。私たち消費者には、循環型社会をつくろうとする企業を応援する機運が高まっている。商品の中に人件費、広告代、流通マージン、リストラ費用、新製品の開発費用など、あらゆる原価が含まれていて、どうしてこれにリサイクル費用が入らないのか。リサイクル費用を原価にしっかり織り込んで、余ったお金をリサイクルしやすい新製品の開発やリサイクル処理施設などへの投資に回せないのか」と疑問を抱く。

 松田助教授は、「日本の使用済みパソコンは、東南アジアなど海外ではまだまだ現役で使える水準。ところが、現行の解釈では、使用済み中古パソコンを海外へ輸出した場合、輸出した時点でメーカーのリサイクル責任は消える。しかし、社会的、道義的責任は厳然と存在している。例えば、パソコンを国内で販売するとき、海外でのリサイクルも考慮に入れ、リサイクル費用を予め積み立てておけば対処できるはず。将来、『日本の製品は循環型社会の創出に貢献している』という評価を海外からも得られるよう、リサイクルに投資すべきなのではないか」と考える。

 メーカーが主張する排出時徴収や「将来充当企業内資金管理方式」という実質的な排出時徴収方式に対し、「本当に高い回収率を得られるかが心配でならない。合格ラインは回収率80%。これを達成しなければ、パソコン業界に対する信用は失墜する」と指摘。業界としても、正確な回収率を素早く公表していく誠意が求められる、とする。

 「一昔前の消費者団体は、ただ『反対』を唱えるだけだった。しかし消費者は変わった。国民全体のレベルが高くなったのに、企業がこれに気づかないと大きな失敗を招く。マーケティングのうまいソニーあたりが、製品原価織り込みをいちはやく採用し、排出時は無料化する“環境にやさしい企業”を演出するという抜け駆けがあるかもしれない。逆に、こうした競争環境をつくり出せる条件整備を、電子情報技術産業協会(JEITA)のなかでも真剣に議論する必要があるのではないか」

 消費者を味方つけた企業は強い。「パソコン業界もリサイクルを武器に、新しいマーケティングを始める時期に来ている。消費者は、循環型社会の実現に向け頑張っている企業を必ず応援する。進む道を間違えるとあっさり見放される」と警鐘を鳴らす。(安藤章司)