視点

ネットによる電力取引の危うさ

2002/01/21 16:41

週刊BCN 2002年01月21日vol.925掲載

 昨年、エンロンが突如、倒産した。エンロンはITを駆使して、エネルギー市場を大変革したアメリカ企業として一躍、脚光を浴びた企業であった。2年前までエンロンはテキサス州などを中心に州際パイプラインを運営する企業であった。ところが、エネルギーの自由化がアメリカの20州ほどで進むなか、1999年11月エンロンオンラインを開設。発電事業者やガス事業者から電力やガスを買収し、これを電力やガスの小売事業者に販売する企業としてネット上でセールスする、つまりエネルギーの卸売りをするビジネスである。

 エンロンオンラインはインターネット上で買い付けた原油、天然ガス、電力およびエネルギー関連商品、さらに金融商品にまで手を広げ、01年には、半年のあいだに20万件、1000億ドルもの取引がインターネット上で成立した。そしてアメリカの企業ランキングの7位にまで躍進し、エネルギー規制緩和の追い風に乗って、エネルギー自由化の旗手として世界企業のランキング入りをした。エンロンはインターネット上の巨大商社として名を馳せることとなった。しかし崩壊もあっけないものであった。売買取引が巨大化するにともない、巨額な損失を抱え込み、米証券取引委員会(SEC)が調査を始めた。その結果、簿外取引に巨額な負債が発覚した。投資ファンドとの不正取引も指摘され、株価は紙くず同然となった。エンロンは、アメリカ国内だけでなく、世界各地のエネルギー事業者と提携、余剰電力の売買事業にも乗り出しており、日本にも電力料金の高さに目をつけ、青森県など5か所で発電所計画を予定していた。

 電力自由化を04年春までに進める日本にとって、エンロンオンラインの崩壊は教訓となるものである。その教訓とは産業、国民生活のインフラである電力、エネルギーを金融商品としてインターネット上で取引する危うさである。これこそリアリティ商品であるエネルギーをバーチャル取引する危険が、今や全世界を覆っている。電力料金がアメリカの2倍もする日本は、当然、コストダウンを目指す必要があるが、エンロンのようなオンライン取引に狙われていることも事実である。エネルギーのようなインフラ産業がネット取引上で中心となると、エネルギー供給、電気事業が不安定化する恐れが出てくるのである。
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