回収ルートの矛盾点

 家庭からの排出パソコンを、どう回収するのか――。産業廃棄物業界が注目している。これまで産廃事業者は、法人からの排出パソコンの回収や、パソコン販売店に集まった排出パソコン、家電4品目の指定引取場所からの回収など、さまざまな形で、排出パソコンや排出家電の収集・運搬を手がけてきた。

 産廃事業者は、都道府県から企業が排出するゴミを扱う許可を受けた事業者であり、一方、家庭が排出するゴミは、市町村から一般廃棄物の許可を受けた事業者が回収している。市町村単位で許可を得ている一般廃棄物処理業者より、都道府県単位で許可を得ている産廃事業者の方が、より広範囲に活動できることから、産廃事業者は、これまでも、幅広く排出パソコンの処理を引き受けてきた経緯がある。

 今回の家庭用パソコンで、家庭からの軒下回収が中心となった場合、産廃事業者は規制により家庭からの排出パソコンを回収することができない。

 家電リサイクルの時は、特例措置を受けた家電販売店が、家庭から排出家電(4品目)を回収したのち、産廃事業者に渡すことで解決した。排出家電は、販売店がA、Bグループに分かれた指定引取場所に引き渡すことになっているが、実はほとんどの場合、産廃事業者“そのもの”が、メーカーから委託を受ける形で指定引取場所になっている。

 産業構造審議会(産構審)の議論では、家庭からの軒下回収に宅配便を活用する意見が出ている。日本通運をはじめ、主な宅配便事業者は、産廃許可を取得しているケースが多く、家庭からの排出品の回収を、ビジネスとして成立させようと躍起になっている。

 メーカー→販売店→家庭の販売ルートを「動脈物流」と呼び、家庭→廃棄物事業者による収集運搬→メーカーを「静脈物流」と呼ぶ。メーカーが生産した製品は、使い終わった後、必ず「静脈物流」を経由して、メーカーに戻ってくる。動脈と静脈を使い、メーカーと消費者を循環させる仕組みをつくることで、リサイクルを促進させようという考え方だ。

 家電リサイクルで、宅配便はすでに先手を打っている。東京都の指定引取場所のBグループの大半を日本通運が委託を受け、大阪ではAグループの多くが佐川急便、Bグループが日本通運、愛知県のBグループは、西濃運輸と日本通運が委託を受けている。静脈物流を虎視眈々と狙う宅配便事業者の戦略が伺える。この動きに危機感を強めるのが産廃事業者である。(注:宅配便も産廃許可をもっている意味では産廃事業者である)

 東京産業廃棄物協会の橋本章専務理事は、「われわれの業界は中小企業が多く、大手の宅配便事業者が組織的に静脈物流に乗り出してくれば脅威になる。また、中間処理の許容量も少なく、排出パソコンをトラックに積んでも、降ろすところがないのも困る。パソコンメーカーと大手業者が組んで処理施設をつくるのはいいが、中小産廃業者が“蚊帳の外”におかれるようではもっと困る」と打ち明ける。

 「東京都内の産廃事業者だけで8000社もある。このなかには、排出パソコンを手で分解して、使える部品を有価物としてコツコツとリユース(再利用)に回している真面目な事業者も多い。単に、宅配便に任せればいいという問題ではない。とはいえ、われわれ産廃および一般廃の事業者も含めて、埋め立てや焼却だけしていればいいという時代は終わった。中古販売、部品の再利用など、静脈物流全般を通じた循環型社会の実現に向けて、大きく転換を図る時期に来ている」と危機感を強める。

 橋本専務理事は、「長年議論になっているが、そもそも産廃と一般廃の許可が異なるため、われわれは家庭からの排出パソコンを回収することができない。家庭から排出するパソコンは一般廃となり、同じ家庭用パソコンでも、販売店が回収して排出すれば産廃扱いになる。これは矛盾だということで、環境省の中央環境審議会の場で異議を申し立てている」と、産廃行政の在り方そのものを見直すべきだと主張する。(安藤章司)