転機迎える携帯電話

 2001年、携帯電話は大きな転機に差しかかっていた。

 新規加入の純増数が7-9月期、96年の統計開始以来、4半期で初めて200万台を割ったのだ。8月に加入総計が7000万台を突破したものの、「高度成長時代」は終わり、急激な市場拡大が見込めない「成熟期」に移りつつあった。

 そんななか、移動体通信で業界2位のKDDIは苦戦を強いられていた。圧倒的首位に立つNTTドコモが第3世代携帯電話「FOMA」で、3位のJ-フォンが内蔵デジタルカメラで撮影した画像をメール送信できる「写メール」で独自性を打ち出しているのに対し、KDDIは10月、子会社のツーカー・グループを含めた新規加入が純減を記録するまで追いつめられていた。

 迎えた年末商戦、KDDIは勝負に出た。

 12月1日、カーナビゲーションなどで使われている全地球測位システム(GPS)に対応し、位置を検索できる端末を発売したのだ。しかも、付属機器を外付けするのではなく端末内部に入れ込み、出来栄えはKDDIの小野寺正社長が、「他社が追随しようとしても、1年以上はゆうにかかる」と自信をのぞかせるほどだった。

GPS機能を取込む

 この機能、発端は2年前にさかのぼる。

 ある日、「cdmaOne」の中核技術を開発するメーカー、クアルコムから、「(cdmaOneの頭脳部分に当たる)チップの中にGPS機能を取り込むことができますよ」と提案されたことだ。

 それも単に、GPS衛星から情報を受け取るだけではなく、「クアルコム側に専用サーバーを用意して、そこで計算させます。そうすれば、いままでの携帯電話と、大きさも重さもアンテナの形状も変えずに自分の位置がある程度わかるんですよ」というふれこみだった。

 ちょうどこのころ、携帯電話は変わり始めていた。

 それまでの音声通話のみならず、99年2月にドコモが開始したサービス「iモード」によって、携帯電話を使ったデータ通信に道が開きつつあったのだ。

 KDDIの前身3社のうち、DDI、IDOでもドコモに遅れること2か月の99年4月、携帯電話によるインターネット接続サービス「EZウェブ(IDOではEZアクセス)」を開始した。

 その後のiモードなどの人気沸騰ぶりは説明するまでもないだろうが、並行して、携帯電話への情報提供、すなわち「モバイルコンテンツ」の事業構造も固まっていった。通信会社が顧客から利用料を電話料金に上乗せして徴収し、数%を手数料として受け取ったのち情報提供企業に渡すという枠組みだ。収益が安定して確保できるようになったことで、移動体通信各社はモバイルコンテンツ事業に経営資源を投入していく。

 そこにクアルコムからGPS機能の話があり、DDIやIDOでは、「一般の利用者にとって、いちばんありがたいのは、コンテンツとして利用できることじゃないかな」といった議論が起きつつあった。(平岡忠紀●文)