WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第94回 サンの新Solaris

2002/02/25 16:04

 サン・マイクロシステムズは、自社新OS「Solaris9」のベータ版を02年1月にリリースした。しかし、この新OSはインテル64ビットのアイタニウム、マッキンレーなどをサポートしないことが判明した。これまでインテルサーバーでサンUNIXもサポートしてきた多くのサンパートナーから強い非難をサンは受けることになった。

インテルをサポートせず

 Solaris9は02年6月出荷予定だ。「当OSはサンの64ビット『ウルトラSPARCⅢ』チップ向けに最適化されており、サンの新鋭サーバー『スターキャット』、オラクルミドルウェア、そしてLinux APIをもつことが大きな特徴だ」とサンのSolaris担当役員、グラハム・ロベル氏は語った。

 米大企業ユーザーではサンのUNIXサーバーと多数のインテルサーバーが混在しているケースが圧倒的に多い。このため多くのサン系列のソリューションプロバイダは、サンUNIXとインテルを接続する場合、インテルにもSolarisを搭載するケースが多かった。そのためインテルサーバーでのUNIXとしてSolarisは高いシェアを保有していた。

 米SIerであるAMCのスティーブ・イスラエル副社長は、「UNIXとインテルサーバーの相互接続は多くのSIerの重要なジョブ分野だ。サンが新OSでインテルの主力となる64ビットチップをサポートしないとは考えられないが」と前置きして、次のように補足説明した。

 「サンはインテル64ビットと本格的に競合できるのはサンSPARCとIBMパワーだけだと考えている。HPとコンパックはRISCチップの新規開発に挫折したからだ。サンは競合上インテルのサポートを停止したのだろう」。

 多くのサンパートナーはいずれサンがインテルサポートを停止することを予見していたようだ。サンとインテルの冷戦状況が長く続いていたからだ。一方サンは、Linux開発コミュニティとは密接な関係を続け、SPARC版Linuxは強化してきた。サンはこの成果を新OSに統合し、Solaris9にLinux APIを載せ、インテル接続には同サーバー上にLinuxを採用することを推奨することにするのだろう。

 サンはインテル64ビット性能が強化され、64ビットのインテルSolarisが実現してしまえば、サンのSPARCサーバーの優位性は失われてしまうことを懸念しているようだ。サンはネット上の「シングルサイン標準」でもマイクロソフトのパスポート陣営との激しい競合を展開している。従ってサンは64ビットインテル上のウィンドウズ普及も阻止しなければならない。そのためにはSolarisと同系列のLinuxがインテルサーバー上でのシェアを高める戦略を採った。

 サンは現行Solaris8アップデート版を02年3月までに出荷する。このアップデート版もインテルの32ビットまでのサポートに限定し、64ビットインテルはサポートしない。

 「インテル64ビット向けSolaris9については何も答えられない」とサン幹部は語る。

 サンはハイエンド分野では「SPARC+Solaris」戦略を強化し、ローエンドでは「インテル+Linux」という複合アーキテクチャに転換することが予想される。(中野英嗣●文)

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