Skill upへの挑戦 これからのIT人材育成

<これからのIT人材育成>第9回 LPI Japan(Linux Professional Institute Japan)

2002/03/04 16:18

 インテルやヒューレット・パッカード(HP)、IBM、NECなど、日米の大手ハイテク企業がLinuxの研究開発促進のために研究所設置を発表したのは2000年8月のこと。その後、Linuxは徐々に浸透し、IBMに至っては「S/390」への搭載を表明、基幹システムへの応用も検討し始めた。低コストでカスタマイズが容易、基本性能も申し分ないLinuxは、マイクロソフトの独壇場であるOS市場を脅かし始めている。LPI(Linuxプロフェッショナル協会)はLinux技術者育成のため、世界共通認定試験の普及を図るNPO(非営利組織)だ。メインフレーマを中心に取得が急がれている同資格の行方を追った。

普及促進に向けてLinux資格を認定

■NPOとして活動

 LPIは、Linux専門家の技術レベルを評価するために全世界共通の基準で、なおかつ信頼性の高い評価が得られる認定制度の確立を目指すNPOだ。LPIの設立は1998年。CLUE(カナダ・ナショナルLinuxユーザー団体協会)結成時に、Linux技術認定サービスに関する議論が行われたことがそもそも発端である。

 その後、99年10月25日、加ニューブランズウィック州政府よって非営利団体の認可を受けた。日本法人設立のきっかけは、99年10月、米ネバダ州ラスベガスで開催されたコムデックスで、後にLPI Japanの初代理事長に就任する成井弦氏(日本SGI副社長=当時)が米LPIの役員と会談したことによる。日本でもLinux普及の重要性が増しつつあり、LPIのような機関を設立する必要があると説いたことが始まりだ。

 日本でのLPI活動の条件としては、NPOによる組織化要請があった。そして00年3月31日、東京都知事に特定非営利活動促進法第10条第1項の規定による特定非営利活動法人の設立認可申請を行ない、同年7月14日、同法第12条第1項の規定に基づき認可された。

 現在、LPI Japanのプラチナスポンサーに参加するのは、NECソフト、ターボリナックス、日本IBM、日本SGI、NEC、PA、日立製作所、富士通、ミラクルリナックス、リーディングエッジ、リナックスアカデミー、レーザー5の12社である。

■Linux普及に追い風

 NEC、富士通、日立、日本IBMといったメインフレームメーカーのLinux普及に対する積極的な姿勢について、成井弦理事長は「今後、サーバーの世界は間違いなくLinuxが中心のOSになる」と意気込む。

 では、日本国内でLinuxが普及する土壌は、どの程度できあがりつつあるのか。成井理事長は、実は欧米に比べ日本にはLinuxがいち早く普及する要因が少なくとも3つはあると主張する。

 1つは、主要メインフレームメーカーの積極的な推進である。NEC、富士通、日立、そして日本IBMといった日本のメインフレーム市場を独占するメーカーが、自社製品のOSとしてLinuxを採用する動きをみせている。

 とくにIBMは、「S/390」でLinuxをネイティブでサポートすることを表明、メインフレームの復活をLinuxによって成し遂げる意志を明確にしている。

 2点目は、ゲーム開発現場におけるLinuxの活用である。日本のゲーム業界が世界最先端のレベルを誇っていることは有名だ。そのけん引プラットフォームであるソニー・コンピュータエンタテインメントのゲーム専用機「プレイステーション2(PS2)」のSDK(開発環境)はLinuxベースで構築されている。

 3点目は、組込型OS市場の急成長である。NTTドコモのiモードは、すでにトロンベースのOSが主流だが、そのほかのモバイル機器および今後登場するであろうさまざまなネット家電に対する組込型OSにLinuxが採用される動きがある。

 このような環境と、「従来から日本人はベース技術を発展させることに驚くべき才能をみせてきた。この国民性が、Linux普及の土壌として日本にはある」と成井理事長は指摘する。

■3つの試験レベル

 LPIの認定試験は3つのレベルに分かれている。

 現段階(02年2月)で実施されたのはレベル1(全てのLinuxに共通するシステム管理業務の基礎)とレベル2(応用管理と最適化=中級)で、レベル3(上級)の実施はまだ先となる。

 レベル1と2を合わせて02年12月までに「最低5000人の受験者となる」(成井理事長)見込みだ。

 成井理事長は、すでに全国110法人以上の専門学校で説明会を開催、今年夏ごろに10数法人の参加、来年春ごろを目処に100法人程度の参加を見込んでいる。また、専門学校への対処のほか、講師の育成、公立・私立学校への展開も予定しているという。

 日本語の試験は、NCS Pearson(http://www.vue.com/japan/)の電子テストサービス事業部門VUE(Virtual University Enterprise)試験会場ネットワーク内のLPI認定試験会を利用して申込み・予約手続きを行い、全国48か所でコンピュータ上で行われる。

 VUEだけではなく、PROMETO RIC(電子テストサービス)への参加(合計150-200人の試験会場となる見込み)も予定しており、さらにペーパーテストでの実施も行いたい意向だ。

 LPI認定試験の合格率は、レベルを問わず65-70%程度という。上位レベルを取得するには下位レベルを取得していなければならない。Linuxの認定資格は、ディストリビューションベンダーの資格を除けばLPIしかなく、「レベル2をもっていればほぼ自動的に採用が確定する」(成井理事長)IT関連企業もあるほど、認知度は上昇している。
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