実践 新規公開株 投資のポイント

<実践 新規公開株 投資のポイント>1.IPO投資の魅力と難しさ

2002/03/04 16:18

 長引く景気低迷や企業業績の悪化、不良債権問題などから、なお底が見えない株式相場。さらには、持ち合い株の時価会計制度の導入をはじめ、企業業績の圧迫要因から、上場企業の破綻もあとを絶たない状況が続いている。

 魅力ある株式市場にするための業界努力が空転するなか、既存銘柄特有の「しこり」のない新規株式公開(IPO)企業への注目度が高まりを見せている。

 日本経済を牽引する原動力として新しい産業育成の機運から、東証マザーズ市場やナスダック・ジャパン市場が相次いで開設され、機能低下した銀行に代わって企業を資金面から応援する体制が整った。

 地方の証券取引所も、地盤沈下する地方経済の活性化とともに生き残りをかけてベンチャーマーケットを創設。将来展望のもてる企業への投資を可能にするインフラが整ってきた。ベンチャー企業への投資は急成長による株価の上昇という大きな魅力がある一方、経営基盤が確立していない企業も多く、リスクも高いと言われる。

 しかし、リスクは日本経済全体に通じることで、魅力あるマーケットそのものの存在が失われていた点を考慮すると、魅力ある投資チャンスを与えていることは確かと言える。

 IPOへの投資は抽選で公募株の配分を受けた投資家にとって、短期間で株価が何倍にも上昇するということが珍しいことではないばかりか、株式市場に上場して以降もなお、株価が何倍という単位で乱高下するケースがある。

 ベンチャー市場の創設以来、IPOをする企業数は過去の年間100社程度から200社内外にまで増加したことで、投資家のチャンスが格段に広がった。多くの投資家が参加することによって市場の魅力は増すため、各取引所はホームページを活用した情報の提供にも力を入れ始めている。

 しかし、IPO投資が可能な投資家はこれまで一部の富裕層や証券会社との太いパイプをもつ一部の投資家に限られてきた。

 それは、一般に公開された情報が少なく、株式投資の判断材料として機能するデータが乏しいため、証券会社主導で配分する先は、リスク許容度の高い投資家に限られたためだ。

 インターネット証券の台頭などで情報量は日を追うように増加しているものの、一般の株式投資に比べると、投資に必要な情報やデータはいまでもなお不足しているため、IPO投資特有の情報収集や投資判断が不可欠になる。

 さらには、株価の値動きが大きいため、中長期投資というスタンスが必ずしも成功するとは限らない。情報と株価動向の特徴については、新たな投資スタンスを知っておく必要がある。
  • 1