進化するECビジネス

<進化するECビジネス>ホームクリップ 業者の選定と見積もりができるリフォームサイト

2002/04/08 16:18

週刊BCN 2002年04月08日vol.936掲載

 ホームクリップ(下川啓幸社長)のリフォーム業界向けECサイトが好調だ。3月下旬の時点で売り手が約450社、買い手が約8000人に達した。サイトは昨年4月に開設。消費者は、リフォーム業者の選別と見積もり依頼ができる。リフォーム業界には、詳しい情報を消費者に提供するウェブサイトがまだ少ない。そんななか、同サイトは、日本最大級のリフォーム情報サイトとして注目を集めそうだ。設立にたずさわった下川社長は、「リフォーム市場は今後も拡大していく。そこで、消費者主導型のリフォームサイトを作った」と語る。今年度(2003年3月期)に1500社以上の売り手会員、2万人以上の買い手会員の獲得を狙う。

●業界最大の情報サイト、工事事例なども紹介

 ホームクリップが提供するリフォーム関連サイトは、売り手会員であるリフォーム業者と買い手会員の消費者をつなぐことを目的としている。

 下川社長は、「消費者主導型のサイトに仕上げた」と語る。そのため、サイトは、消費者側がリフォーム業者選びから見積り依頼まで行えるリフォーム仲介事業を主なサービスとしている。
 見積りは、3社の業者に依頼でき、希望の条件を入力することでリフォームにかかる金額を算出してくれる。業者選択の物差しとして、消費者の声を元に登録業者を5段階に分けて評価している。買い手が20社の売り手会員に対し、どのようなリフォームを得意としているかを匿名で質問することも可能だ。

 ほかには、約200種類のリフォーム事例やリフォーム知識・ノウハウを集めた「リフォーム情報館」、部屋の模様替えをサイト上で確認できる「カラーシミュレーター」など、リフォームを分かりやすく知ることができるコンテンツを揃えた。下川社長は、「リフォーム業界では、日本最大の情報サイト」と自負する。

 サイトを通じてリフォームした場合は、各リフォーム業者が加入している保険に加え、独自に上乗せした工事保険を設けていることも特徴だ。

 保険は、リフォーム工事中の事故から工事完了後1年までの事故をカバー。リフォーム業者による施工上の欠陥に起因する事故で損害が生じた場合、リフォーム業者が加入している保険に上乗せした額を補償する。保険額は、工事目的物に対する損害が5000万円まで、第三者の財物損壊や身体障害などの損害が1億円までとなっている。

 保険対象としては、例えばリフォーム時に取り付けたエアコンが数日後、落下して床が壊れてしまったり、工事中に不測の損害が生じたケースや、他人に怪我をさせてしまった場合など、リフォーム業者が補償すべき事故となっている。

 サイトの利用価格は、売り手が入会金3000円と月会費2000円、仲介手数料が工事代金の3-5%。02年3月までは入会金と月会費を無料とした。買い手は無料でサービスを利用できる。



●リフォーム市場は堅調な伸び、情報提供でさらに拡大

 ホームクリップの設立は01年4月2日。発足にあたり、住宅関連事業を手がけるINAXと、ガス全般の事業を手がける東京ガスを中心に9社が出資し、設立された。

 下川社長は、INAXで企画営業に携わっていた。INAXでは、ホームクリップのビジネスモデルを具体化するために、設立プロジェクトを設置し検討を重ねた。

 「新築マンションの購入数が縮小するなか、リフォーム市場は堅調に拡大している。今後さらに市場が拡大するために、消費者主導型のサービスを提供する場としてホームクリップを設立した」と当時を振り返る。

 国内市場では、住宅関連のリフォーム取引数が1年間で平均500万件だという。業者がリフォームしたい消費者を開拓する手段としては、電話営業や訪問販売、チラシなどといった地道な営業が中心だ。

 一方、消費者がリフォーム業者を選択する理由としては、口コミもしくは自宅の近くにあるリフォーム業者に依頼することが大半。

 「だが、業者の情報が十分に消費者に提供されているわけでないため、トラブルが発生する率が非常に高かった。そのため、リフォーム業者に関する詳しい情報を消費者に提供することが重要となる。消費者と業者間を隔てていた壁を取り払う手段として、BtoCサイトを運営することとなった」という。

 設立において9社が出資した理由は、「1社が提供できる範囲が限られており、なおかつ中立の立場で運営できるサイトとして、リフォームに関わる企業に出資を求めた」としている。

 サイトは、今年3月下旬の時点で売り手会員が約450社、買い手会員が約8000人に達している。

 今後は、「登録会員を増やし、全国主要都市部の業者選択を充実させる」としている。サイトの仲介サービスは、昨年が関東・関西・中部圏を中心とした展開だったが、今年3月に全国にエリアを拡大した。だが、売り手会員は、1県あたり1業者しかいないという地域があるという。

 下川社長は、「リフォーム業界はパソコン設置率が高いが、ホームページを立ち上げている企業はまだ2割程度。インターネットを業務で活用することが少ない状況にある。とくに、メールで顧客とやり取りすることで商売になると考えている企業が少ないようだ」と分析。

 会員数拡大策として、今年度からリフォーム業界向けにITコンサルティングを事業化することも検討している。

 こうした取り組みにより、同社では会員数を02年度末までに売り手で1500社以上、買い手で2万人以上を見込んでいる。

 会員が増えることで、昨年度に約100件だった成約件数を、今年度は約300件まで引き上げる構えだ。

 下川社長は、「現段階では、業績は赤字の状況だが、04年度までに単年度黒字を目指す」と意気込みをみせる。
  • 1

外部リンク

http://www.homeclip.co.jp/