実践 新規公開株 投資のポイント

<実践 新規公開株 投資のポイント>7.直近第三者割当増資の発行価格

2002/04/15 16:18

週刊BCN 2002年04月15日vol.937掲載

 株式の投資判断としてよく利用される言葉に「マクロ」と「ミクロ」がある。マクロ経済では世界経済の現状認識や今後の見通しなどについて語られることが多く、ミクロ経済は個別企業について語られる。簡単に言ってしまえば、「森」と「木」の関係である。「森を見て木を見ない」とか「木を見て森を見ない」という表現で揶揄されることがあるように、いずれも視野に入れておく必要があるということだ。

 これを新規公開株(IPO)に置き換えてみると、企業の事業内容や規模などはマクロ(森)と言える。ミクロ(木)は投資判断をするうえでのテクニカルな数値となる。そのひとつが、第三者割当増資にともなう株価の発行価格。大企業の100%出資子会社の場合は、設立当初から数億-数十億円という資本金でスタートするケースが多いが、独立系ベンチャー企業で、しかも個人経営からスタートしたような事業では、株式会社の設立当初の資本金は最低資本金となる1000万円で始まることが多い。

 1000万円の資本金では、5万円額面で200株の発行済み株式数となるが、IPOをするためには最低でも数億円の資本金を積み上げなくてはいけない。株主も経営者1人だけではなく、最終的にはIPOにともなって300人以上の要件を満たさなくてはいけない。

 そのために、IPOを目指す企業は通常、第三者に対して未公開株を発行する第三者割当増資を数回行って資本金を大きくする。この段階でベンチャーキャピタルや取引先、主力取引銀行などが株主に名を連ねることになる。

 この第三者割り当て増資の根拠となる株式の発行価格は、企業業績などに基づいて算出するのが一般的だが、ネットバブルと呼ばれたころには、実際にIPOをして高値を付けた株価を参考に算出されることも珍しくはなかった。将来の企業価値を前倒しで織り込んだものになるが、ある程度はその時々の企業価値を反映した数値が算出される。

 とくにベンチャー企業の場合、成長シナリオのなかで株価は上昇する方向にある。IPO前に行った直近の第三者割当増資の発行価格は、冷静に判断した企業価値として参考になるため、IPOによる初値を予測するうえでは、ベースになる株価と位置付けられる。直近の発行価格を公募価格が下回る現象は、本来なら稀であるはずだが、最近ではネットバブルの後遺症的にいくつかの企業で散見された。

 これは、未公開株投資で大きな利益を目指していたベンチャーキャピタルなどが、損失覚悟のIPOとなったことを意味する。

 こうした情報をチェックしておくことでその企業や主幹事証券の意図や思惑を読み取ることが重要だ。
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