攻防! コンテンツ流通

<攻防! コンテンツ流通>5.複製防止機能付きのCCCD規格を発表

2002/05/06 16:04

週刊BCN 2002年05月06日vol.939掲載

 パソコンで音楽CDが聴けなくなる――。日本レコード協会(レコ協、富塚勇会長)は、従来の「音楽CD=CDDA規格」とは異なる、独自の複製防止機能を組み込んだ特殊な“音楽CD”の規格を正式に発表した。

 規格の名称は「複製制御CD=コピーコントロールCD=CCCD規格」。(1)パソコンでの再生、(2)パソコンからCD-Rへの複製、(3)MD(ミニディスク)への複製――などを阻止できる。

 これまでの音楽CDは、こうした複製に対する防御ができなかった。

 だが、従来の音楽CD=コンパクトディスクの規格から外れているため、厳密には「音楽CD」とは言えないのが現状。メーカーのなかには、「CCCD規格ではCDプレーヤーの動作を保証できない」と訴える向きもあるが、レコ協側は、「『○○社製のプレーヤーでは再生できません』とミリオンセラーのアルバムの表紙に書きますよ」と、メーカーに圧力をかける。

 同時に、消費者の混乱を避けるため、レコ協では複製制御CD独自のロゴ(写真)や表示規則をつくり、この“音楽CDではない音楽CD”の普及に努める。すでにエイベックスと東芝EMIが複製制御CDの全面的な採用を決めている。

 富塚会長は、「音楽CDをパソコンで誰もが気軽に大量に複製できる現状には、もう我慢できない。複製権=コピーライトはレコード会社など権利者が専有するものであり、パソコンは権利を侵害している」。

 「アルバムごとCD-Rに複製すれば、アルバムが売れなくなるのは当たり前。最近急増しているネット上でのファイル交換は、シングルCDの販売に打撃を与える。利用者は新品のアルバムを購入したあと、CD-Rに複製し、アルバム本体は中古販売店に売却する。またレンタルで借りてきて簡単に複製する。これでは新品が売れない」と憤慨する。

 レコ協の調べによれば、CD-Rの販売枚数は世界全体で今年60億枚になる見通し。このうち半分の30億枚が、音楽CDの複製に使われる見込みだという。

 富塚会長は、「世界での音楽CDの販売枚数が26億枚程度であることを考えれば、違法な複製CDの枚数が本物よりも多くなる。パソコンメーカーは8倍速の高性能CD-Rを採用し、ご丁寧に複製ソフトまで添付して売っている。まったく話にならない」と、パソコンメーカーへの反感を強める。

 一方、ソニーの「バイオ」など、高級ステレオコンポなみの音響機能を搭載するパソコンが普及し、多くの利用者がパソコンで音楽を楽しむ現状を考えれば、レコード会社が利用者からの反感を招く危険性もある。

 この点について富塚会長は、「音楽CDからMDへの複製まで拒否すると反感を食らうだろう。しかしパソコンを使った複製はレコード産業を脅かす死活問題。絶対に複製は許せない」と、徹底抗戦する構えだ。

 ソニーマーケティングの池戸亨副社長は、「最終的には消費者が決めること」と冷静に受け止める。

 パソコンでの再生やCD-R、MDへの複製など、どこまで複製を許すかの「複製許可のレベル」は、レコード会社の裁量に委ねられている。消費者の反応やメーカーの動きを観察しながら、レコード会社の判断で着地点を模索することになる。(安藤章司)
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