前回の(上)では、公正取引委員会が今年3月に公表した「ソフトウェアライセンス契約等に関する独占禁止法上の考え方―ソフトウェアと独占禁止法に関する研究会中間報告書―」のなかから、「プラットフォームソフトの技術情報の提供」に関して独禁法上問題となる4つの行為類型のうち、2つ目までを紹介した。続いて第3に、基本ソフトのメーカーがハードメーカーやアプリケーションソフトのメーカーから技術を吸い上げようとする行為だ。具体的には、技術情報に基づいて製品開発を行う段階で得た技術情報のフィードバックを求めるだけでなく、独自開発技術に関する権利・ノウハウまで帰属させるよう義務づけたり、競合する基本ソフトに対応した製品の開発に利用することを禁止したりすることである。

 第4に、情報の秘密保持義務の範囲を不当に拡張しようとする行為。秘密性をもたない技術情報やハードメーカーやアプリケーションソフトのメーカーが独自に開発した技術情報まで対象に含めようとすることである。今回の報告書のもう1つの柱が、「ソフトウェアライセンス契約に関する制限」について独禁法上の考え方を明確化した点だ。「ソフトウェアのライセンス契約では、著作権法上の権利の行使として制限が加えられる場合も多い。しかし、不当に競争者を締め出したり、研究開発を制限するような行為に対しては独禁法が適用される」(公正取引委員会取引部取引企画課・山本和史課長)。まず、報告書では、ソフトの取引形態をソフトメーカーとエンドユーザーが直接使用許諾契約を結ぶケースのほか、その間にハードメーカー、ソフト流通業者、システムインテグレータが介在したケースなど大きく6つに分類。これらの取引形態を想定した上で、ソフトウェアライセンスにともなうさまざまな制限条項のうち、6つの条項について独禁法上の考え方をまとめた。

 ①ソフトウェアの複製回数などを制限する条項=ハードメーカーや流通業者に対するライセンス料の算定で、複製以外の根拠を適用したり、複製回数の上限や下限を不当に設定する。②ソフトウェアの改変を制限・禁止する条項=ソフトの正常な稼動を保証し保守サービスを提供するために必要な範囲内での制限・禁止は妥当だが、デバッグ(誤りの修正)やカスタマイズまでを制限。③ソフトウェアの改変の成果に関する権利・ノウハウの譲渡や独占的な利用の許諾を義務付ける条項④リバースエンジニアリングを禁止する条項=対象となる基本ソフト向けにソフトやハードを開発するのに、インターフェイス情報が不可欠にも関わらず、その情報が提供されていないケースに適用。⑤ほかの製品との抱き合わせ販売=ソフトメーカーがハードメーカーとのプレインストール契約や、流通業者との販売代理店契約で、抱き合わせ販売を義務付ける。⑥競合する他社製品の取り扱い制限

 今回の報告書では、⑤の抱き合わせ販売など、すでに問題が表面化している事例も多いコンピュータプログラムを対象に、独禁法上の考え方を明確化した。しかし、今後注目されるのは、インターネットのブロードバンド化で急速に需要が拡大するとみられているデジタル形式で流通する音楽、映像など「デジタルコンテンツ」の取引である。「広義のソフトウェアに含まれるデジタルコンテンツに関しては、これから1年ぐらいかけて問題点を検討していく」(山本課長)という。デジタルコンテンツの制作、流通、利用の実態を把握した上で独禁法上の問題点を検討していくほか、コンテンツ制作の委託取引についてもコンテンツに係わる権利の帰属、二次利用の制限などの問題も検討していく方針だ。