WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第104回 次世代携帯電話仕様

2002/05/13 16:04

週刊BCN 2002年05月13日vol.940掲載

 次世代携帯電話の仕様を巡って、業界トップのノキアをリーダーに、シンビアンのOS「EPOC」を業界標準に仕立てようとする企業グループと、ウィンテル連合の争いが激しくなった。インテルは携帯電話用プロセッサを発表し、マイクロソフトもウィンドウズベースで携帯電話市場に参入することになり、この市場でのEPOC対ウィンドウズの対立構図が明確になった。世界の携帯電話は年間4億台の需要があり、1億2000万台程度でサチュレートしたパソコンに比べても、今後の市場拡大の期待には大きな開きがある。

「EPOC」陣営が優勢

 ノキアをはじめ、韓国のサムスン電子を除く世界の有力携帯電話メーカーは、パソコン同様のウィンドウズ支配を電話では起こさせないため、一斉にEPOC陣営へと参加した。すでに02年3月の独セビットでEPOCを搭載した「ノキア9210」、ソニー・エリクソン連合の「P800」が発表された。ノキア、ソニー・エリクソン以外にEPOC採用を表明しているのは、富士通、モトローラ、松下グループ、三洋電機、独シーメンスで、EPOC陣営の01年世界携帯電話シェアはすでに70%に近づいており、ウィンテル陣営の劣勢は明らかだ。米ITアナリストのブライアン・リビングストン氏は携帯電話がモバイル市場でノートパソコンに代わる日は近いと次のように解説する。

 「ソニーのバイオ程度の機能は近いうちに腕時計内に実装されてしまうだろう。モバイルユーザーは手首に巻き付いたプロセッサの恩恵をフルに受け、重いパソコンを運ぶ苦労から解放される。次世代のポストPC商品の主役は間違いなくスマートフォンだが、マイクロソフトとインテルはこの潮流に気付くのが完全に遅れてしまい、当市場でのウィンテル支配は決して起こらない」ノキア広報は02年2月にEPOC搭載の自社仕様発表時に、次のように自信満々に語った。「ノキア連合の仕様はオープンなので、どの企業もこれを採用することを妨害されない。従ってウィンテル連合も、もし本気で当市場に参入したいのであれば、EPOC仕様を採用すればメーカー、ユーザーにとっては大変結構なことになる」

 セビットでウィンテル仕様の携帯電話を出展したのは英ベンチャー「センドー」1社に過ぎず、この場で見ればリビングストン氏の指摘通り携帯電話でのウィンテル地位はマイナーだ。米アナリストのジョブ・ヒンクス氏は「携帯電話の主力OSはEPOCとなった。当OSとJAVA2マイクロ・エディションとは見事に統合されている」と前置きして米IT業界に次のような警告を発した。「米IT業界はすべてのIT業界標準は米国だけから誕生すると油断している。しかし新しいコンピュータである電話やAV機器の標準はEUや日本の企業連合から生まれる。これらの有力で巨大メーカーは米国には存在せず、EUと日本だけにあることを米業界は決して忘れてはならない。ユビキタス標準が米国から生まれる可能性はきわめて低い」(中野英嗣●文)

  • 1