攻防! コンテンツ流通

<攻防! コンテンツ流通>7.独自のBBコンテンツを月額300円で配信

2002/05/20 16:04

週刊BCN 2002年05月20日vol.941掲載

 KDDIがブロードバンド(BB)コンテンツの開発を目的に、01年11月から始めたのが「111.tv」(ワンワンワンドットティーヴィー=http://www.111.tv)だ。利用者は月額300円の基本料金で、毎月10本程度のBBコンテンツを視聴できる。

 映像コンテンツを多数集めたサイトとしては、有線ブロードネットワークスが中心となって運営しているショウタイム(http://www.showtime.jp/)が有名。

 ほかにも、NECビッグローブが中心となって、KDDIディオンと日本テレコムODN、松下電器ハイホーが提携して、BBコンテンツ流通の“4社連合”を組織した。4社連合は6月を目途に具体的なサービスを始める。

 

 規模から言えば、ショウタイムや連合サイトの方が大きいが、111.TVは「制作者と視聴者と共に、新しいBBコンテンツの在り方を模索する点が、ほかのBBサイトと大きく異なる。運営方針も十分差別化できている」(111.TVを担当する新規事業グループ・久永公紀リーダー)としている。

 111.tvは、ディオンのBBポータルサイト「BBディオン=http://bb.dion.ne.jp/」とも別組織で運用するなど、独自性をもっているのが特徴だ。

 久永リーダーは、「111.TVを観ていただければ分かるが、独自コンテンツの比率が多い。マス放送や、DVDなどパッケージ媒体に比べれば、ネットによるコンテンツ流通は、視聴者数や映像の品質という面で、まだ及ばないところが多い。しかし、BB上で流通するコンテンツは、既存媒体にない利点があることも見逃せない。111.TVでは、こうしたBBコンテンツ流通の在り方を研究する実験場である」と話す。

 今後3年以内には、事業計画上、20万人程度の利用者を見込んでいる。だが、収益モデルは完全に描き切れていない。

 「今の段階で、何ができるかを検討している最中。BBに適したコンテンツ開発が成功すれば、おのずとビジネスの可能性は広がる」と、当面は制作者や視聴者のアイデアを取り入れながら、最適なコンテンツづくりの可能性を追求する。

 「インターネットは、個々人が自分の嗜好性に合わせて独自の楽しみ方を味わえる道具。この特性を考えれば、個々人の創造的なエネルギーをどうやってネットで受け止めるかがポイント。放送やパッケージ媒体で流通している完成したコンテンツを、ただ単にネットにもってきても失敗する。もっと個々人の創造性に焦点を当てた“提案型のBBコンテンツサイト”をつくる」と、前衛的なサイトに仕上げる。

 KDDIがコンテンツを開発を手掛けるのでなく、また、コンテンツの権利を買い取って配信事業をやるわけでもない。ニッチながら、制作会社と連携しつつ、どのようなコンテンツがネットの利用者に受け入れられるのかを探求する。

 「たとえニッチなものでも、BB利用者を意識した意欲的な作品であれば、積極的に111.TVで紹介したい。BBコンテンツのなかで、視聴者や制作者の要望を取り入れ、活気あるコミュニティをつくりだした先例はあまりない。これまで、BB化してきた過程では、こうした探求が欠けていた」と、問題意識を強くもってサイト運営に取り組む。

 コンテンツ流通を手掛けるうえで欠かせない会員管理や課金、決済、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)など基幹回線網については、KDDIによる独自のシステムを基盤に開発した。

 「111.TVは、より高いレイア(階層)に位置しており、足回りの回線インフラについては、KDDIなどの既存のものを使う。われわれは、あくまでもBBコンテンツサービス部分の開発に力を入れる」と、KDDIやディオンとの役割分担を明確にしたうえで、主体性あるBBコンテンツの探求を続ける。(安藤章司)

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