WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第105回 e-ビジネス・オン・デマンド

2002/05/20 16:04

週刊BCN 2002年05月20日vol.941掲載

 企業がコンピューテング処理パワーをネットを介して必要な時、必要なだけ使いしかもその利用料金が使ったIT量に応じる従量制ネットワーク・アウトソーシング(ネットソーシング)、「ITユーティリティの時代」が近々訪れようとしている。IBMはこれをeビジネス・オン・デマンドと呼び、03年から全世界で本格的にサービスを開始する。既にITユーティリティ方式のサービスは米国で開始されており、HPやサービス専業最大手EDSもその利用を顧客に呼びかけている。

新しいアウトソーシング

 EDSが競合IBMを破って02年に獲注した米セブン-イレブンの納入業者の2万社を結合するSCMシステムもITユーティリティ方式で、EDSはこの他にもノキア(通信機器)、クアーズ(ビール)、ソルティア(化学品)などの同方式ネットソーシング顧客を既にもつ。ガートナーの米企業IT部門調査でも、企業は次のような分野でITユーティリティの活用を計画している。(1)ネットワーク管理、(2)システム管理、(3)トランザクション処理、(4)アプリケーション管理、(5)アプリケーションメンテナンス、(6)サーバー管理、(7)ストレージ管理、(8)センター破壊復旧/非常時のビジネス継続、(9)IT資産管理、(10)ヘルプデスク管理。

 IDCはITユーティリティ利用企業もブロードバンドインフラ、ブレードサーバー、モバイル用又はオフィス内ネットアプライアンスは自前で調達すると予測する。とくにこの利用企業はオフィス内でもパソコンのアップグレードなどを嫌ってノンOSアプライアンスクライアント機器を使うようになると予測する。IDCはITユーティリティ元年は01年で、05年頃からその普及速度が高まり08年頃に従来的アウトソーシングを上回って、この利用が企業では当たり前になると予測する。また企業が経営資源のITを外部に全面依存するので、ITユーティリティサービス業者の選定には、その経営基盤が安定していることを最優先条件にすると考えられる。従ってITユーティリティ事業者は世界的に見ても数は1ケタ内に抑えられてしまうことも想定される。生き残れる事業者は巨大ITメーカー、ITサービス、これに何社かの巨大通信サービスに絞られるだろう。

 ほかのSIer、ITサービス会社は巨大ITユーティリティ会社のインフラを使うことで、システム開発をユーザーから受託する。米企業でもITユーティリティ移行を計画する場合、所有ITをどう処分するか、ITインフラが多くの企業で共有されることの問題点、あるいは現行多数のITスタッフをどう処遇するかの議論が始まっていると、ガートナーは説明する。ITユーティリティ利用はエンタープライスだけでなく、中小企業にも一挙に広がるとガートナーはいう。米テクノロジーソリューション社長R.ファレトラ氏は世界不況でIT要員を削減してしまった企業からITユーティリティ利用が始まる」と説明する。(中野英嗣●文)
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