変わるかシステム入札

<変わるかシステム入札>7.首都圏コンピュータ技術者協同組合(上)

2002/05/20 20:43

週刊BCN 2002年05月20日vol.941掲載

 首都圏コンピュータ技術者協同組合の横尾良明理事長は、大手ITベンダーばかりでなく、地方の中小ソフト開発会社などが官公庁のシステム入札に参加することを目指した新しい提案を行っている。  「果たして、現状の官公庁のシステム開発が適正な価格で行われているのか」と強い懸念を示す横尾理事長に、現行の官公庁システム開発における問題点、そしてそれをどう改善すべきかを聞いた。

中小が参入できない

 ――官公庁のITシステム入札の現状について、どういった点が問題だと考えていますか。

 横尾
 よくある話ですが、地方自治体のシステムは、大手ITベンダーが受注し、実際の運用などは地元業者に出すことがほとんどです。地元の業者ですから、地方自治体の職員とお互いに知り合い同士という場合が多い。

 そこでシステムの手直しを検討する際、地方自治体の職員が知り合いの地元業者に、「いくらぐらいでできるのか」とたずねるわけです。そうすると、技術者だから「300万円くらいでできるよ」と安すぎる価格で答えてしまう。

 その金額ならやってもらおうということになっても、実際の契約は東京にある大手ITベンダーと地方自治体の間になされている。見積もりが出てくるまでに時間がかかるし、しかも3000万円と1ケタ桁多い価格となっているんです。

 地方の業者が安めの価格を行っていたとしても、1ケタ違うとはどういうことか。元請け、孫請け体質で、適切なコストでIT開発がなされていないことを示す典型ではないかと思います。

 そこで2000年1月に、全国ソフトウェア共同組合連合会で「官公庁のシステム開発ジョイントベンチャー導入手引書」というレポートを作りました。地方の中小ソフト会社が、直接官公庁システムの入札に参加できるような、ひな形を作ることが狙いでした。

 ――刊行後の反響は。

 横尾
 反響は大きかった。ところが、実際のビジネスには反映されなかったんです。

 ――それはなぜですか。

 横尾
 ジョイントベンチャーという形態は、実際の仕事内容が固まってからでないと動きにくいという性質があったからです。

 仕様書が固まった段階であれば、ジョイントベンチャーで参加は十分可能です。

 しかし、現状は仕様書のベース作りは官公庁、地方自治体側ではできませんから、最初からITベンダーに知恵を借りるケースが多い。もちろんこの仕様書のベース作りに対しては報酬は出ないのですが、その後の契約はベース作りにかかわった業者が獲得することが多い。

 ここで不透明な入札の仕組みが起こる温床になっているのではないかと思います。

 ――不透明な仕組みを変えるにはどうすればよいのでしょうか。

 横尾
 02年1月に「官公庁のシステム開発 コンソーシアム方式導入手引書」をやはり全国ソフトウェア共同組合連合会から作りました。

 前回のレポートの欠点を補うべく、上流行程版という位置づけのものです。

 地方自治体でシステムを開発する際には、行政側のプロジェクトリーダー、大学教授、地域住民、ITコーディネータ、コンサルタント、その他といった人員編成の核になる中心メンバーを作り、彼らを核にいくつかのステップを重ねることで官公庁システムの透明性を高めていくことを狙っています。

(三浦優子)

【略歴】
横尾良明
(よこお・よしあき)1950年北海道小樽市出身。84年ソフト開発を行うシグマバンテアンを設立。89年首都圏コンピュータ技術者協同組合を設立し理事に就任。現在、首都圏ソフトウェア協同組合・理事長、中小企業近代化審議会・臨時委員、全国ソフトウェア協同組合連合会・専務理事、協同組合東京官公需組合連盟・副会長などを兼務。
  • 1