実践 新規公開株 投資のポイント

<実践 新規公開株 投資のポイント>12.1株あたりの利益と株価

2002/05/27 16:18

週刊BCN 2002年05月27日vol.942掲載

 企業を判断する価値にはさまざまな手法がある。商取引にともなう企業判断では、支払い余力などを見るうえでクレジット(信用)リスクが主要な判断材料となる。帝国データバンクなどの信用調査機関がもつ企業データはこの種のもので、株式市場では一般的に利用されることはない。クレジットリスクとは、言い換えると「倒産する危険性」を判断するもの。バブル以降の景気低迷により、企業倒産が増加しているなかでは、上場企業も例外ではないため、決算のバランスシートなどから倒産の可能性を調べる必要性は増してきた。株式投資における企業データで一般的に利用されるのは「会社四季報」などがあるが、ここでは、決算数字とともに、今期予想の1株当たりの利益(EPS)が重要視される。

 株価は将来の価値を材料に決まるため、すでに終わってしまった決算ではなく、この先の見通しが重要になる。EPSは企業が利益から税金を払ったあとの最終利益を、発行済みの株数で割り、1株当たりがどの程度の最終利益を生み出したのかを見る数値だ。上場企業の大半は株式の額面が50円であり、1株50円で投資した場合に、50円が1年間でどのくらいの利益をもたらしたのかを投資判断に利用する。例えば1株が10円の最終利益を上げるとする。年間20%の収益を生み出したことになる。現行の金利が限りなくゼロに近い水準であることに比べると投資収益は異常な高さとなる。この場合の株価は額面の50円の評価では低すぎるため、一定水準までは投資家の買いニーズが見込まれる。企業の場合は倒産しないとは言い切れない側面があり、業績も確約されたものではなく一種の努力目標のようなもの。

 株価が額面の10倍となる500円と想定しても、EPSからみると年間2%の投資収益が見込まれる。株価を1株利益で割った数値を株価収益率(PER)というが、この場合では500円を10円で割るため50倍の株価水準となる。東証全銘柄の予想PER平均は50倍前後。これと比較すると、この企業の株価水準としては、数字だけの判断では市場平均の株価と考えることができる。これがさらに、来期はEPSが20円になりそうだという観測が出れば、株価が先に利益を織り込んで上昇するため、企業情報のなかでもEPSというのは株価形成にとって重要な要素となる。実際には市場によってPERの平均は異なり、人気、不人気の業種によっても大きな開きが生じている。しかし、急成長の過程にあるベンチャー企業であれば、EPSが実際に2倍になるということも夢のような話ではなく、EPSの動きは見逃せない。
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