攻防! コンテンツ流通

<攻防! コンテンツ流通>9.ストリーミングの低料金サービス

2002/06/03 16:04

週刊BCN 2002年06月03日vol.943掲載

 とにかく安く映像コンテンツの配信をしたい――。リズムブロードバンドソリューションズ(細川勝社長)は、こんな顧客の要望に応える映像配信サービスを提供している。個人向けに無料で映像配信サーバーを貸し出すサービス「ストリームスター」から、3か月9600円の有料サービス「イージーステーション」など、無料または低料金のストリーミング(映像配信)サービスを揃える。

 個人向け無料ストリーミングサービスは、映像配信の前に広告映像を流すことを条件に、15MB分の映像ファイルを無料で配信できる。これは主に個人向けのサービスだが、中小企業向けにも低料金のストリーミングサービスを提供する。

 5月から始めた「イージーステーション」は、3か月9600円で、最大300kbpsの帯域幅で5分間の映像を配信できる。5分を超える場合は、毎5分2000円で拡張できる。

 このほか、本格的な映像配信サービスとして、今年1月から始めた初期費用5万円、月額2万9800円の「ストリームステーション」がある。このサービスでは、単なる配信だけでなく、視聴者に対してIDとパスワードを発行し、会員管理ができる。また、前日までの視聴状況も参照できる。

 細川社長は、「商品やサービスの紹介などの映像配信に関して、大多数の中小規模の事業者は、なかなか大規模な投資ができないのが現状。当社では、まずは敷居を低くして、映像配信の利用頻度を高める」と、業界最安値で安定した映像配信サービスを手がける。

 すでに、数十社の企業が同社の有料ストリーミングサーバーを利用しており、今年度末(02年10月期)までに200社に増やす。有料ストリーミングサービスの用途としては、投資家向け広報(IR)や会社案内、商品紹介などが多い。IR広報を手がけるディスクロージャーバンク(東京・港区)と今年4月に提携し、同社が配信する決算発表やIR映像などの配信を全面的に請け負うことになった。

 通信事業者など大手は、自前のコンテンツ配信ネットワーク(CDN)などの大規模システムを構築し、月額何十万、何百万円という値段で大口の映像配信を請け負う。人気歌手や映画などエンタテインメント系では、一度に多くの視聴者が集まるため、こうした高価なシステムが必要だ。だが、IRや商品紹介などの映像番組は、せいぜい何十人が一度に視聴するだけ。

 こうした小口の顧客にとって、最も重要なのは、どれだけ“安く”配信できるかという点。月額2万9800円のコースでは、配信だけでなく、会員認証や視聴ログなど、視聴者動向を把握するのに欠かせない基本的な管理機能も備えている。

 また、学習塾、陶芸教室、生け花教室などのイーラーニング需要も多い。細川社長は、「ある特定の100人、200人に配信する需要は、今後必ず伸びる。大手配信事業者の価格体系は、こうした草の根需要に対応していないケースが多い。当社では、今後拡大するであろう中小の需要を積極的に取り込んでいく」と意気込む。

 しかし、社員数23人の技術中心の同社では、どうしても営業力に限界がある。「今後は、中小企業の情報システム構築に強いシステム販社と組み、当社のストリーミングサービスを売り込んでいく。すでにいくつかの販社とは具体的な提携の話を進めている。当社のサービス名にはこだわらず、システム販社向けにOEMすることもあり得る」という。

 今年度(02年10月期)の売上は3億円、営業利益9000万円を見込む。来年度(03年10月期)は売上4億2000万円を目指す。

 アドレスはhttp://www.rizm.co.jp/。
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