実践 新規公開株 投資のポイント

<実践 新規公開株 投資のポイント>14.初値形成における特徴

2002/06/10 16:18

週刊BCN 2002年06月10日vol.944掲載

 IPO投資の醍醐味のひとつが初値の動向にある。数が少ない公募株を入手するのは激戦で、仮に公募株が手に入っても、利益が保証されたわけではない。通常は抽選などで公募株の配分が決まり、数日以内に払い込みを済ませるが、実際にIPOするまでにはさらに約1週間の期間がある。この間に、相場環境が大きく変化することもあり、初値にも影響する。初値が公募価格を下回ったとしても、すぐに損失を出す必要はなく、しばらく持ち続けるという選択肢がある。年間を通じた初値動向は、公募価格を上回る場合が圧倒的に多いため、まずは公募株を入手したほうが得策だろう。

 初値決定の方法には大きく分けて2つのケースがある。まずは、通常の株式売買同様に、売りたい投資家から出される売り株数と、買いたい投資家から出される買い株数の需要と供給によって決まるという「オークション方式」。これは、純粋なマーケット原理に基づいて株価が決定されるため、とくに異質なものではない。しかし、IPOの初値の場合にはもともとの公募売出株数が限られている一方、買い株数は無限に膨らむ可能性がある。これでは、いつになっても初値が決まらず、気配値だけが架空の株価として連日のように上昇していくことも起きる。極端に過熱するケースでは、初値が思わぬ高値で決まったあとに、一転して売り気配に転じるという、とんでもないボラティリティ(変動)に見舞われ、投資家が短期間で大きな損失を出すこともある。

 このため、初日から買い株数が多いような場合には、たいてい翌日の取り引きから規制が入る。株式投資の決済は約定した日を含めて4営業日後の決済となるが、事前に入金を求める措置などが取られ、初値がつきやすく誘導される。これも、IPO市場の特徴のひとつと言える。2つめの初値形成は、店頭(JASDAQ)市場におけるダッチ方式と呼ばれる初値形成で、これは、主幹事証券が上場初日の買い株数と売り株数をつき合わせながら午前11時に一本値として、初値を提示する方法である。オークション方式では、買い株数と売り株数の状況を見ながら初値水準を探ることができるのに対して、ダッチ方式は主幹事証券の裁量に委ねられるため、初値が付くまでは、外部から状況を窺うことができない。11時に初値が決まってしまうと、もうその日の売買は行えないという特徴がある。IPOの人気度合いを最も象徴する初値の動向は、投資リズムをつかむうえでも避けられないチェックポイントであり、各市場における初値形成の特徴によって売買手法は異なってくる。
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