5月下旬にJR東京駅丸の内北口で、3次元立体画面で駅周辺の道案内をしてくれるモデルシステムのデモンストレーションが行われた。主催したのは、総務省情報通信政策課宇宙通信調査室。3次元GIS(地理情報システム)の研究開発に取り組んできた成果を、具体的なアプリケーションにして初めて公表した。コンピュータの画面上には、東京駅の八重洲方面や丸の内方面の風景が、建物を含めてリアルに映し出され、駅の構内や地下街なども人間の視線で見るのと同じ感覚で道案内をしてくれる。オフィスビルなどの建物も、色や外観なども実物と同じにしており、目的地までの道順を視覚的に覚えられるように画面上で擬似体験できるシステムだ。

 ただ、正直なところ、迷路のような東京の街を飛び回って仕事をしている人間にとっては3次元で道案内するアプリケーションの有効性がピンと来ない面もあった。「今回は、地下街、地下駐車場など立体地図が有効だと考えられる場所を選んで経路案内のデモを見てもらったが、確かに反応が大きく分かれた」とは、会場で説明にあたっていた総務省職員。「2次元の平面地図で十分。3次元など無駄だ」という反応がある一方で、「非常にわかりやすく有効だ」という意見も多かったという。自称・方向音痴という知人に聞くと「3次元地図は絶対に必要。2次元では建物の高さや色がわからない」との意見。どうやら2次元の地図を読むのが苦手かどうかも、3次元に対する評価に大きく影響しているようだ。

 もちろん、3次元GISのアプリケーションは、今回の道案内システムだけではない。上・下水道や通信回線などさまざまな地下埋設物を管理するアプリケーションでは、3次元GISは非常に有効だと考えられている。大都市を中心に増え続けている超高層建物の建設計画で、景観審査や日影、防災などのシミュレーションを行うといった利用も検討されている。「3次元GISを今後さまざまな分野で活用していくためにも、データを共有できる仕組みを作っておく必要がある。今回のデモンストレーションは、3次元GISのデータガイドラインの検討が進み、その成果を示す狙いもあった」(総務省宇宙通信調査室・竹内芳明室長)。2次元GISに関しては、電子地図などの標準化が国土交通省などの関係省庁で進められ、ほぼ完成しつつある。しかし、次世代技術である3次元GISは総務省が中心となってデータガイドラインの作成が始まったばかりで、ちょうどたたき台としての第1版が完成したところだ。

 「消防庁や警察庁など、利用が期待される関係省庁の担当部署にたたき台を渡して、利用者側の視点で意見を聞いてみたい。民間からの意見も取り入れながら、今年度中には第2版をリリースしたい」(竹内室長)。総務省が、3次元GISの研究開発に積極的に取り組む狙いがもうひとつある。3次元GISを携帯電話やPDA(携帯情報端末)でも利用可能なアプリケーションとすることだ。かつては大量のデータ処理で大型コンピュータが必要だった3次元GISも、ようやくパソコンレベルでも利用できるようになってきたが、携帯電話などで利用するには、まだまだ“軽量化”を図る必要がある。3次元GISの実用化に向けては、3次元データの保守管理や流通の仕組みなど検討しなければならない課題はまだまだ山積みではあるが、着実に成果が出始めていると言えそうである。