進化するECビジネス

<進化するECビジネス>全国下請企業振興協会 都道府県協会と連携して中小企業を支援

2002/06/24 16:18

週刊BCN 2002年06月24日vol.946掲載

 全国下請企業振興協会の運営する中小企業を対象としたECサイト「取引マッチングシステム」の会員数が5500社を超えた。同サイトは、01年4月からサービスを開始。下請企業が親企業と適正・対等に取り引きできることを目的に立ち上げた。同協会が会員企業にとって有益な情報を提供する。今後は、会員企業に適したメールマガジンを配信する計画。02年度(03年3月期)中に会員企業を1万社まで引き上げる構えだ。将来的には、各都道府県の中小企業振興協会(都道府県協会)が提供するECサイトとの連携強化を図る。

1年間のプロジェクトを経て、01年4月にサービスを開始

 「取引マッチングシステム」のプロジェクトは、00年4月に遡る。全国下請企業振興協会・工藤淳指導員は、「下請企業が親会社と適正かつ対等に取り引きできることを目的に、ECサイトを立ち上げることとなった」と当時を振り返る。プロジェクトには、同協会を含め、都道府県協会、発注・受注企業などが携わり、サイトの開発にあたった。01年1-3月にサイトの実証実験を行い、01年4月にサービスを開始した。同サイトでは、協会が収集した企業情報や案件情報を提供する。会員企業は、希望に応じた企業や案件を、業種・地域などで検索できる。最新の中小企業を取り巻く業界ニュースや各種講習会、イベントなどの有益情報も閲覧が可能だ。

 取り引きは、自動検索した企業に対して、あらかじめ文面が決まっている「メール文面機能」により、送信することが可能だ。「中小企業では、メールでの取り引きの際、『どういう文面で送ればいいのか分からない』という声が多くあったため、この機能を塔載した」という。受発注機能は塔載していない。「BtoCの場合は、消費者がサイトで購入できるような注文機能が必要だ。だが、BtoBでは、1回だけの取り引きを行うわけでなく、継続的な取り引きを行いたいというニーズが高い」ためだ。「情報交換ひろば」では、企業間の取り引きに加え、「提携したい」、「新発明・新製品の紹介」などを情報交換できる。工藤指導員は、「中小企業は、技術力があっても、営業力が乏しい。また、その逆もある」と指摘しており、「情報交換ひろば」を会員企業同士のコミュニティを活性化するサービスとして位置づける。

 また、同サイトでは、会員企業のホームページ作成を支援。会員企業は、好みのデザインや背景を選択し、サイトで提供するホームページ作成要綱に従い簡単に企業ホームページを作成できる。同サイトの利用料は無料。「できるだけ多くの中小企業に活用してもらいたいため無料とした」としている。会員企業数は、今年6月中旬の時点で5500社を超える。発注企業が約1500社、受注企業が約4000社。会員企業の多くは、都道府県協会に登録しており、その大半が製造業だ。会員企業の業況については、各都道府県協会の専門的知識を有する指導員が把握する。安全な取り引きを徹底するために、同協会が入会審査を施し、IDとパスワードを発行する。

会員数はまだまだ少ない、今年度中に1万社を目指す

 「取引マッチングシステム」は、発注企業の会員が比較的多いことと、中小企業が中心であるのが特徴だ。工藤指導員は、「会員企業は、従業員数が10人以下が6割。『取り引きが成立しやすい』という声を聞く。受注企業としては、大企業の会員が多いと、なかなか取り引きできないというのが現状だからだ。そのため、受注企業が積極的に発注企業を検索しているケースが高い」としている。サイトでの取引実績としては、「自分で歩き回っても開拓できなかった新規取引先が、ネットにより条件に見合う取引が検索できた」ことや、「親会社の倒産で受注の大半がなくなったものの、同サイトに企業情報を掲載することで発注企業から取引したいという連絡が入った」など、さまざまなケースがあったという。

 今後は、メールマガジンサービスの配信を計画する。同サービスは、各会員企業ごとに、取引情報や国の中小企業への施策などの情報を流すものだ。「まずは、受注企業と発注企業用の2種類のメールマガジンサービスを来年度中に行う。次に、業種や地域などで分けての配信も展開していきたい」意向だ。加えて、「都道府県協会でもECサイトを提供しているため、各ECサイトとのシステム連携が図れれば、お互いの会員企業にとって、さらにサイトが有益なものとなる」としている。将来的には実現する方向だ。インターネットビジネスについては、「会員企業の声を聞くことが重要だ」と強調する。同協会は、都道府県協会と連携し、中小企業のニーズを吸い上げることに注力する。工藤指導員自身も、「中小企業の現状を直接聞きに行ったり、アンケート・電話などでニーズを収集している」という。

 「頭では『インターネットを活用したビジネスが重要だ』と理解する中小企業が多いが、一方で、『どうせビジネスにならない』という意見も多い。IT設備を構築するための投資が回らない企業もいる」と指摘しており、「現在、中小企業が求めていることは、とにかく取引先を多く開拓すること。ECサイトは、『出会いの場』を提供することが重要だろう」と分析する。同サイトのアクセス数は、1か月平均で2-3万ページビューとなる。「まだまだ少ない。会員数を多く集めることが責務だ」としており、「今年度中に1万社まで引き上げていく」と闘志を燃やす。(終わり)
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外部リンク

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