e-Japan最前線

<e-Japan最前線>1.関啓一郎参事官インタビュー(上)

2002/07/01 16:18

週刊BCN 2002年07月01日vol.947掲載

 「2005年に世界最先端のIT国家となる」――。01年にスタートしたe-Japan戦略に基づいて、政府は新しい重点計画「e-Japan重点計画―2002」を策定した。先の重点計画(01年3月策定)から大幅にバージョンアップした新重点計画のポイントは何か。内閣官房IT担当室・関啓一郎参事官に聞いた。

施策にスピード感と厚みを!

 ――新重点計画を策定するに当たっての基本的な認識は。

 関
 先の重点計画に掲げられた220項目の具体的な施策のうち、01年度に予定されていた103項目の施策は全て実施した。しかし、諸外国もこぞってIT戦略を推進しており、“世界最先端のIT国家を目指す”という目標を達成するには、さらにスピード感と施策の厚みを加える必要がある。新重点計画では、パブリックコメントの指摘によって新規に加えた施策も含めて318項目の具体的な施策を盛り込んだ。

 ――確かに日本のインターネット普及率はこの1年間に大幅に上昇したが、国別順位は後退した。

 関
 IT戦略本部の本部員の方々からは、IT戦略への取り組みは全体として成果があがっており、評価できるとの意見を頂いているが、目標に向けてのスピードの違いが順位後退という結果になった。

 本部員から『日本も頑張っているが、外国はさらに進歩している。思ったより技術の進歩も早い。目標を見直すなど新たな戦略が必要』との意見も出されており、日本も相当のスピードと装備で、世界の山頂を極めるとの姿勢を強く打ち出す必要があるだろう。

 ――高速・超高速インターネットの普及に関して、改めて加入者数・普及率の増加を期待すると表明した。

 関
 ネットワークの高速・超高速化とアプリケーション(ネットワークの利用)の高度化が相互に刺激して好循環を生み出し、全体の動きが一段と加速されていくことが重要だ。そのためには、まず、ITを使いこなす人材の育成が求められる。電子政府・電子自治体も早期に実現しなければならないし、電子商取引も促進されるようにしなければならない。これらの施策を総合的かつ一体的に推進することで、実加入者数・率の増加につなげていく必要がある。

 ――通信分野の大幅規制緩和も盛り込まれた。

 関
 6月4日に総務大臣の諮問機関である情報通信審議会IT競争政策特別部会が最終答申(草案)を公表した。

 そこで1種・2種の事業区分の廃止や参入規制の大幅緩和など、新たな競争の枠組みの考え方が示された。IT戦略本部へも、こうした考え方に沿ったパブリックコメントも寄せられており、新重点計画に改革の方向性を示した。

 ――パブリックコメントでとくに印象的だったのは。

 関
 当然のことではあるが、IT利用者の視点から建設的なコメントが多かった。

 例えば映像コンテンツの安全性では、多くの母親を含めて50件以上のコメントが寄せられた。将来、今まで以上に生理的に刺激的な映像が供給されるようになると、97年のポケモンショックのときの光過敏発作に加えて、映像酔いや自律神経症状などの生理症状が発現する懸念が高まり、今から対策を打つ必要があるとの指摘だ。

 ――電力線搬送通信設備に使用する周波数帯域の拡大にも反対が109件もあった。

 関
 反対意見は日本アマチュア無線連盟や多くのアマチュア無線愛好者から寄せられた。アマチュア無線、短波放送、屋内医療機器への影響を懸念しているためと思われるが、政府としても各方面の意見を十分に聞き、他の無線業務への影響を調査して、周波数の利用の可能性を検討していくことにしている」(つづく)(ジャーナリスト 千葉利宏)
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