e-Japan最前線

<e-Japan最前線>2.関啓一郎参事官インタビュー(下)

2002/07/08 16:18

週刊BCN 2002年07月08日vol.948掲載

早急な法整備が必要

 ――情報セキュリティ対策では、国と地方公共団体との連携を一段と強化する必要性が指摘されている。

 関
 e-Japan重点計画2002(以下、新重点計画)では、国民に信頼される電子政府・電子自治体を構築を促進するため、「地方公共団体の情報セキュリティ確保の支援」を掲げている。国による地方公共団体への緊急対応体制の整備への支援や地方財政措置の実施などの支援を行っていく考えだ。

 また「重要インフラのサイバーテロ対策」でも、地方公共団体における情報セキュリティ対策に関する取組みを促進するような具体的方策の確立をめざすことにしている。

 ――e-Japanを実現するための法基盤整備の進ちょく状況はどうか。

 関
 IT戦略本部でe-Japan戦略を昨年1月に決定して以来、昨年の通常国会で12本、秋の臨時国会で4本、今年の通常国会で13本のIT関連法案を政府提出法案として国会に提出した。

 例えば「電気通信役務利用放送法」で、通信・放送の融合に対応し、NTTなどの電気通信事業者の回線を利用する放送制度の整備(今年1月施行)、「商法等の一部を改正する法律」で株主総会の電子招集・電子投票等についての整備(同4月)、「地方公共団体の議会の議員および長の選挙に係る電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律」で地方選挙への電磁的記録式投票制度の導入(同2月)などIT環境の整備を推進してきた。

 現在、行政手続のオンライン化を図るための法律案が国会に提出されており、これが成立すれば、数万とも言われる国の行政手続をオンラインでも行うことが可能になる。今後も、「世界最先端のIT国家となる」という目標に向かって、必要な法整備を進めていく考えだ。

 ――国民の理解を深める措置として「e!プロジェクト」の推進が打ち出された。

 関
 e!プロジェクトは、2005年に実現される世界最先端のIT国家の姿を国民のみならず、世界に広く提示するためのショーケースとなるようなプロジェクトと位置づけている。

 これまでに、ワールドカップサッカーの開催に合わせて進めてきた成田空港での無線、光ファイバーを活用した高速インターネット接続環境の整備や札幌市でのモバイルで地下鉄に乗車できるシステムの実験など一部で開始されている。しかし、本格的にe!プロジェクトが動き出すのは今年度からだ。

 現在、具体的な場所などは選定中だが、都心部の多数の人間が集まるコンプレックスでの多様なITを活用したサービス展開や、病院間での電子カルテの共有システムの実証実験などについて実施に向けた準備を進めている。

 ――先月25日に閣議決定された経済財政諮問会議の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(いわゆる骨太方針第2弾)で、IT投資を促進するための税制措置の見直しを検討することが盛り込まれたが。

 関
 新重点計画においても、企業が積極的にITを活用するような環境整備の一環として、IT投資促進税制の検討を掲げている。具体的には、戦略的IT投資を行う企業におけるIT投資負担を軽減するため、2002年度中に税制措置を始めとした支援策を検討することにしている。

 ――株価低迷や円高の進行など日本経済の先行きを懸念する声も高まっている。

 関
 IT化の推進は、わが国の産業において、(1)21世紀を担う人材を育てる、(2)付加価値の高い事業活動への転換を可能とする、(3)効率化により国際競争力を向上させる、(4)新たな需要を開拓する――などの点で重要な役割を果たす。ITはわが国の産業、経済体質、経済構造を変え、日本経済の再生の原動力となると考えている。

 需要開拓の面では民間の創意工夫により、情報家電・医療・物流・文化・娯楽など経済活動や国民生活のあらゆる分野で新しい産業が創出される可能性を秘めている。雇用の面でも、平均的な有効求人倍率が現在約0.5倍であるのに対し、IT関連では約2倍、つまり1人に2つの求人があり、雇用の拡大にも寄与すると期待できる。新たに策定した新重点計画を通じIT化を推進していくことが、景気や雇用の面でも好影響を与えると考える。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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