e-Japan最前線

<e-Japan最前線>4.LITCITY岡山

2002/07/22 20:43

週刊BCN 2002年07月22日vol.950掲載

 政府は先月、e-Japan重点計画-2002を決定し、e-Japan戦略もいよいよ2年目に突入したが、地方自治体の動きはどうなっているのか。電子自治体への積極的な取り組みで有名な岡山市の近況を紹介する。「岡山市がミレニアムプロジェクトの一環として『情報水道構想』を打ち出したのは99年11月。市の電子自治体への取り組みに対して(市民の皆さんも)積極的に協力していただけるようになってきた」(岡山市企画局情報政策部・粕谷明電子自治体担当課長)。岡山市では、市民や企業の間にIT化が着実に浸透し始めているようだ。「ザ・リットシティ・ミュージアム」などのコンテンツも増え始め、電子自治体の姿が徐々に実感できるようになってきた。

積極的な市民参加へ

 岡山市がIT戦略で一躍有名になったのは、下水道を利用した光ファイバー網の構築だ。情報をあたかも「水道の水」のように利用できるようにするため、市の大半をLITCITY(光化された都市)にする『情報水道構想』の実現をめざすなかで、下水道を積極的に活用することにしたのである。ちょうど国土交通省の下水道部でも、下水道を利用した光ファイバーの敷設に取り組み始めたところで、岡山市は00年から「情報水道ネットワーク」の構築に着手、01年6月から運用を開始した。現在、情報水道ネットワークに接続しているモニター数は約700。その9割は一般家庭だ。家庭への接続方法は、引き込み電柱を経由して家庭の中へと引き込む一般的な方法に加えて、各家庭への引き込み下水管を経由する下水道ファイバー・ツゥー・ザ・ホーム(FTTH)を全国初で実現している。

 「100Mbpsの光ファイバーで600世帯以上が接続されているネットワークは全国でも珍しいので、実証実験のテストベットとして利用されている」(熊代晴雄電子市役所担当課長)。今回、岡山市を取材して改めて感じたのは、ハードへの投資からコンテンツやサービス、運営・管理へと重点が移ってきているということだ。岡山市では、テストベットとして情報水道ネットワークを積極的に提供することで、コンテンツの充実を進めようとしている。総務省が01年度から2年計画で取り組んでいる「通信放送融合実験」や「高精彩映像コンテンツ配信実験」、今年1-3月は「学校情報公開システムの研究・開発実証実験」も実施した。岡山市IT戦略のもうひとつつのキーワードが「市民参加の電子自治体」である。「いまでも町内会という自治組織がしっかりしていて、25万世帯の9割以上が町内会に所属している」(粕谷担当課長)。既存の組織をネットワークでうまく結ぶことで、市民参加を促進しようという戦略である。

 今年2月、「市役所・町内会長連携システム」の運用を開始した。約1500の町内会、それらを束ねる約90の連合町内会と、市役所との連絡や意見交換などにネットワークを活用する試みである。さらに、町内会ごとにウェブサイトを設置し、地域のコミュニティづくりを支援していく事業も開始しており、現在7つの町内会をモデル町内会として「モデル電子町内会Webサイトシステム」を今年3月からスタートしたところだ。市民参加を推進するうえで重要なIT教育も、市内33か所の公民館を中心に「情報プラザ」の設置を進めて推進していく考えだ。市民サポートの総合窓口となるITサポートセンターも、01年5月に地元企業のほか大手ITベンダーなど32団体が出資して設立した株式会社リットシティ内に設置する予定で、電子町内会をサポートする「情報ボランティア」の育成にも力を入れていく。(ジャーナリスト 千葉利宏)

  • 1