元気印のインテグレータ

<元気印のインテグレータ> 第5回 エス・アンド・アイ

2002/07/29 20:29

週刊BCN 2002年07月29日vol.951掲載

得意分野を伸ばす

 「これもできる、あれもできるという開発屋では、自分の首を絞めるだけ」――。

 ネットワーク構築を得意とするIBM系販社のエス・アンド・アイ(年商162億円、03年3月期見込み)は、受託案件を絞り込むことで、得意分野を伸ばす戦略を打ち出す。

 岸本孝夫マーケティング本部長は、「ネットワークは、オープン規格で組む比率が高い。ネットワーク構築を手がける販社は、オープン環境を進めれば進めるほど、自分の首を絞め、丸腰に近い状態に陥る」と、オープン化で相互接続性は飛躍的に高まったものの、その分他社との差別化が困難になり、価格下落が続いていると指摘する。互換性の問題から、下手に差別化を打ち出せない呪縛に苦しむ。

 「これまでは、受託できる案件だったら100%なんでも受ける傾向が強かった。しかし、これでは得意分野を伸ばすことができず収益が悪化する。たとえ営業や開発陣が幅広く全方位で“なんでもできます”といった受注を好んだとしても、伸ばすべき得意分野に合わせて取捨選択しないと自分の首を絞める。『ネットワーク構築の“この点”では誰にも負けない』という領域を増やす」

 同社のネットワーク事業は、企業内LANの構築と、主にIBMからの紹介案件であるコールセンター構築が中心。 企業内LAN分野では、データと音声を両方通す案件が急増中だ。データとIP電話(音声)の融合は、LAN網内でも急速に進んでいる。昔のPBX(企業用の構内電話交換機)は次々と情報システムに取り込まれ、同社のようなシステム販社の事業領域に入り込んできた。

 IP電話は、(1)公衆網とつなぐタイプと(2)LAN網内のみで閉じるタイプの2種類ある。前者は通信事業者(キャリア)の領域で、後者がSI販社の領域だと位置づける。

 「サーバーやストレージ(記憶装置)類はIBM製品を使うが、データネットワーク製品は、すでにIBMが同分野から撤退しているため、マルチベンダーで対応している。主にシスコが多い」という。

 「時流に合った通信機器を使い、外資系など海外拠点とのデータ通信や音声通信をIP化する案件を積極的に獲る。当社は業種向けアプリケーションを開発しているわけではないため、企業の業態を選ばず、拠点同士の通信や音声をIP化する需要を、独自の営業で獲得する」と意気込む。(安藤章司)
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