e-Japan最前線

<e-Japan最前線>6.三鷹市のITプロジェクト

2002/08/05 16:18

週刊BCN 2002年08月05日vol.952掲載

 三鷹市が中心となって「あすのまち・三鷹」推進協議会が先月29日に発足した。e-Japan計画を踏まえてITを活用した施策を展開する「あすのまち・三鷹」プロジェクトの推進母体である。協議会には、三鷹市のほかに、三鷹市医師会、三鷹商工会などの公共機関、法政大学、電気通信大学などの大学、研究機関、民間事業者として日本IBM、セコム、NTT東日本など31社が参画。国からの委託で実施が決まっているe!プロジェクトのほかに、公募や提案によって協議会の下に研究会を設置、審査・評価委員会のチェックを受けながら、独自のIT活用プロジェクトも具体化していく計画だ。

21世紀型の自治体経営へ

 9月からは、経済産業省の委託による情報家電を活用したe!プロジェクトをスタートする。まず、学習支援分野の実験から開始。引き続き、健康福祉分野で、医師会と協力して健康管理端末を使って健康データをサーバーに蓄積するサービスや、インターネットを通じて画像と音声で健康相談を行うサービスの実証実験を行う予定だ。総務省の委託によるe!プロジェクトとして高速無線LANとIPv6を活用した「e!スクール」の実験にも取り組む。在宅学習向けに学習履歴や習熟度などを表示できるドリルコンテンツを無線LANで利用できる環境などを構築する計画で、今年中には実験を開始できる見通しだ。

 さらに総務省が進めている電子自治体推進パイロット事業にも今年度から参加。指定金融機関であるみずほ銀行と協力し、民間金融機関が構築を進めている電子決済ネットワーク「マルチペイメントネットワーク」を使って行政サービス手数料の電子納付の実験を今年秋には実施する予定だ。この3つの目玉プロジェクトのほかに、これまでも「みたか子育てねっと」やSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)みたか推進構想などのIT活用プロジェクトにも数多く取り組んでいる。

 「市長から、全てのやり方を変えることになっても構わないと言われている。IT活用を進めることで、行政のあり方そのものが見直されることになるだろう」(三鷹市企画部情報推進室・後藤省二室長)。 まさに、今回のIT活用プロジェクトは、地方行政を変革するための“外圧”なのだ。三鷹市では、安田養次郎市長のもと、まちづくりの基本構想を「人間のあすへのまち」と定め、庁内に21世紀構想推進本部を設置。その下に「効率的で開かれた自治体」をめざして「あすのまち・三鷹」・情報都市づくり推進会議を置き、100人弱の職員を8つの専門チームに分けて配置した。

 IT活用プロジェクトを通じて浮かび上がってきた課題を、行政の組織や仕事のやり方にフィードバックできる受け皿を当初から設けているのである。推進協議会設立後の懇親会の席では、こんな声も聞かれた。「これまで三鷹市ではNTTのINS実験など先進的なプロジェクトに取り組んできたが、実験終了後に成果があまり残らなかったという反省もある。今回は、学識経験者など第3者のチェックも入れ、きちんと目に見える成果を残したい」(幹部)。単なる実験で終わらせるのではなく、「市民満足度の向上」につながるサービスとして提供できるものに仕上げていこうという意気込みが伝わってくる。IT活用の成果をいかに市民満足度の向上につなげていくか。地方分権が進むなかで、自治体経営の優劣が行政サービスにも徐々に影響しそうである。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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