OVER VIEW

<OVER VIEW>未曾有の不況下、国内IT企業 02年3月期決算総覧 Chapter7

2002/08/12 16:18

週刊BCN 2002年08月12日vol.953掲載

 国内を含めて世界的パソコン市場の失速によって、パソコン専門店はもとより、家電量販系リテールも厳しい状況に追い込まれている。01年春決算では売上高が前年比で大きく伸びたところが多かったが、02年春決算では増収増益はわずかにとどまり、多くのリテールは減収減益となった。パソコン関連売上高もヤマダ電機を除くと軒並み大きく落ち込んでいる。パソコン売上減少とともに、パソコン本体の売上構成比も02年春決算では大きく低下し、リテールは本体以外の依存度を高めなければならない。(中野英嗣)

パソコンリテール決算

■リテール、軒並み減収減益で厳しい決算

 パソコンを販売する家電量販店を含むリテールの02年3月期(一部は2、4月)決算はきわめて厳しいものとなった。

 売上高3000億円以上では、ヤマダ電機が前年比19.0%増と売上高を大きく伸ばしたが、ベスト電器は4.5%増にとどまり、コジマは2.4%の減収であった(Figure37)。

 ヤマダは純利益も前年比16.5%伸ばしたが、コジマは95.3%減と赤字スレスレの減益となった。ベストも前年の純損益赤字からは脱却したものの、売上高純利益率は0.1%と僅かである。

 売上高1000億円以上3000億円未満の中堅リテールでは僅かの増収となったデンコードーを除くと軒並み減収、純損益ベースで減益となった(Figure38)。

 純損益でエディオン、デンコードーは黒字だったが、上新電機、ラオックス、ソフマップはともに赤字に転落した。デンコードーだけは営業、経常ベースでは減益となったが、純損益では増益であった。

 パソコンや情報機器に特化する売上高1000億円以下の専門リテールでは、CSK・エレクトロニクスが2年続けて大幅減収、ピーシーデポも3.9%減収、オーエー・システム・プラザ(中間)も22.1%という大幅減収となった(Figure39)。

 CSK・エレクトロニクスは経営権のCSKからの移動により、経営方針が「脱・小売」と「マニア市場の開拓」へと大きく変化した。

 電子情報技術産業協会(JEITA)は01年度の国内パソコン出荷台数は前年比12%減の1068万台、出荷金額は同17%減の1兆7692億円と発表している。これは出荷台数減とともにパソコン単価も前年比約6%減少していることを意味する。量販店リテールはパソコン関連の売上構成比が高くなっているので、この市場規模縮小の直撃を受けている。

 パソコンはリテールが主力とするコンシューマ市場だけでなく、当年度下期は景気低迷もあって企業需要も大きく落ち込んだ。パソコンは世界的に低迷しているため「パソコンがIT市場のけん引役であった時代の終焉」はマイクロソフトも認めざるを得なくなっている。しかし、この「脱パソコン」の次に来る有力候補の姿は見えない。

 パソコン単価が6%下落すると、その市場規模を維持するには台数が6.4%伸びなければならない。これは現在の市場からは期待できない。リテールも苦しい時代を耐え抜く覚悟をしなければならなくなった。国内大手パソコンメーカーも02年度出荷計画を下方修正している状況で、02年度にパソコンが大きく需要増に転じる気配はない。

■情報通信機器ウエイトが高くなった家電量販店

 パソコン専門のソフマップ、ピーシーデポ、オーエー・システム・プラザを除く家電量販系リテールでもパソコン、携帯電話など情報通信機器売上高が大きくなり、結果的に売上構成比も高くなっている(Figure40)。

 ヤマダの情報通信機器売上高は2287億円、コジマは1509億円、ソフマップ1310億円、ベスト1274億円と1000億円プレーヤーが揃い、ラオックス、上新も1000億プレーヤーに近づきつつある。

 パソコン専門店を除いても情報通信機器の売上構成比はラオックスが55.2%と高く、構成比40%台にはデンコードー42.8%、上新電機41.1%、ヤマダ40.8%が顔を揃える。情報通信機器の売上高構成比は大きくなっているものの、パソコン出荷台数減、価格デフレによってパソコン本体の構成比は年々小さくなっている。

 この本体構成比の減少は、専門店オーエー・システムでも顕著だ。00年3月(中間)に55.5%だったパソコン本体売上構成比は01年3月(同)に53.8%、そして02年3月(同)には46.8%と劇的に低くなった。

 専門店に近いラオックスも同じような状況だ。00年3月ラオックスで26.4%だったパソコン本体売上構成比は01年3月に25.1%、そして02年3月には20.7%と大きく落ち込んでいる。パソコンリテールも本体依存ではなく周辺機器、ソフト、サプライ、中古品販売などの比重を早急に高めなければならない。

■マイナス一色になるリテール売上高

 家電量販系、パソコン専門店を含めてリテールでは家電、パソコンともに売上高が減少している。01年3月期(一部は2、4月)決算のリテール全売上高前年比はCSK、オーエー・システムを除くと増収であった。その増収幅もヤマダ41.9%、デンコードー32.0%、コジマ18.9%がきわめて高く、これにラオックス14.9%、ベスト13.9%、エディオン10.6%、ソフマップ8.8%が続いていた(Figure41)。

 ところが、02年3月期ではリテール増収ムードが一変した。ヤマダは相変わらず19.0%と売上高を大きく伸ばしたが、これに続く増収組はベスト4.5%、デンコードー1.7%のみであった。

 ビジネス形態を大きく変えているCSKは02年3月期も売上高を35.9%と大きく落としている。このCSKを除いても、オーエー・システム22.1%、ラオックス16.0%、上新13.1%と2ケタ減収組が増え、前年18.9%も伸びたコジマも2.4%減、ソフマップも7.6%の減収となった。このようにリテール不振の1つの要因はパソコン売上高の減少だ(Figure42)。

 02年3月決算でパソコン関連売上高が前年比増となったのはヤマダのみで、同社パソコン売上高は前年の1156億円から14.1%増の1319億円となった。ほかはすべてパソコン売上高は減少した。

 オーエー・システム(中間)はパソコン本体売上高が前年比32.3%減だった。これに続いてパソコン売上げ減少幅が大きいのは上新電機31.6%減、ラオックス30.9%減である。

 ほかはパソコン売上減少は1ケタ台で、エディオン7.1%減、コジマ5.3%減、ベスト(事務機器を含む)4.2%減となる。

 90年代後半からのパソコン需要増によって売上高を大きく伸ばしたパソコン専門店、家電量販店が多かったが、ウエイトが大きくなっただけパソコン市場の縮小はリテールに大きな打撃を与えている。わが国リテールも市場失速を何度も経験している米国リテールのような経営の本格的リストラに取り組まなければならなくなった。
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