e-Japan最前線

<e-Japan最前線>8.霞ヶ関のキーマンたち

2002/08/26 16:18

週刊BCN 2002年08月26日vol.954掲載

 7-8月で中央官庁の定例人事異動もほぼ出揃い、2年目に突入したe-Japan戦略を推進する新布陣が固まった。一部の省庁で幹部人事もまだ残っていそうだが、e-Japan戦略に関係の深いキーマンの動向をここでまとめておこう。e-Japan重点計画2002が6月下旬に正式決定したあと、例年なら通常国会が閉幕したあとの7月に集中する霞が関人事で新体制へと移行するところが、今年は国会が約1か月延長。新布陣もほぼ1か月遅れのスタートとなった。

e-Japanを推進する新布陣

 まずはe-Japan戦略を取りまとめている内閣官房IT担当室では室長が交代した。IT担当室長を兼務する内閣官房副長官補の交代にともなうもので、公正取引委員会委員長に転出した竹島一彦氏に代わって、元・国税庁長官で前・国民生活金融公庫副総裁の伏屋和彦氏が7月2日付で就任した。多忙な副長官補の下でIT担当室を切り盛りする内閣官房参事官の布陣については、今のところ表立って動きは出ていない。関啓一郎氏(総務省出身)、加藤洋一氏(経産省)、壷井俊博氏(総務省)、近藤賢二氏(経産省)、中村明雄氏(財務省)の5人体制のままだ。しかし、継続審議となった重要法案を抱え、今秋の臨時国会に向けて9月にも一部人事を刷新するとの見方も出ている。

 01年の中央省庁再編後は1月人事が慣例化している総務省では、今年1月に事務次官に金澤薫氏(前・総務審議官)が就任。目玉人事として総務審議官に月尾嘉男・東大大学院教授が就任して話題を集めたが、8月も課長級を中心に大規模な幹部人事が行われた。総務省は、電子政府を取りまとめる行政管理局、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)を含めて電子自治体の旗振り役の自治行政局、情報通信政策を担当する情報通信政策局、通信事業者を所管する総合通信基盤局の4つの局が主にe-Japan戦略を担っている。

 このなかで注目されたのが行政管理局の行政情報システム企画課長のポスト。前任者である旧・郵政畑の岡山淳氏が総合通信基盤局に戻り、後任には行政管理局の本流である旧・総務庁畑の江澤岸生氏(前・内閣官房参事官)が着任した。 自治行政局では、今年6月に岡山県新見市で実施されて注目が高まっている電子投票を担当する選挙部長に、大臣官房審議官だった高部正男氏が就任。電子申請やLGWANなど電子自治体の具体的な施策を担当する自治政策課地域情報政策室長も前任の高崎氏と同じく旧・郵政畑の斉藤一雅氏に交代した。総合通信基盤局では、無線周波数の割り当て問題などの懸案を抱える電波部で5課のうち4課の課長が交代。情報通信政策局では、14課のうち総合政策課、技術政策課など半分の7課の課長が交代するなど人事を刷新した。

 総務省と並んでe-Japan戦略をリードする経済産業省では、3年間近くも事務次官を務めた広瀬勝貞氏が勇退し、7月30日付で村田成二氏(前・経済産業政策局長)が就任した。これに伴って局長クラスの幹部人事も一新され、e-Japan戦略を担う商務情報政策局長は、前任の太田信一郎氏が特許庁長官に転出し、後任には通商・貿易畑が長い前・貿易経済協力局長の林洋和氏が着任。商務情報政策局担当の大臣官房審議官も、林氏と同じく貿易経済協力局(貿易管理部長)だった松井英生氏が就任した。また、課長クラスも、情報処理振興課長、情報通信機器課長、企画官(電子政府担当)、IT産業室長など主要ポストがほぼ総入れ替えとなるなかで、松井哲夫情報政策課長が留任、ますます存在感を増すことになりそうだ。

 公共事業のIT化を推進する国土交通省では7月16日付けで、技術畑の青山俊樹事務次官が誕生。これにともなって技術系官僚の人事が一気に動いた。CALS/ECを所管する技術審議官には前・河川局治水課長の門松武氏、技術調査課長には前・兵庫県理事の北橋建治氏が着任。03年度に迫った直轄工事における電子入札の全面導入実現に加えて、04年度以降の新計画策定が当面の課題となる。e-Japan戦略では、電子政府実現のためのインフラとなる住基ネットが8月5日に稼動したものの、先の通常国会では個人情報保護法の成立が間に合わず、継続審議となってしまった。同様に行政手続のIT化を実現するためのオンライン化3法案も継続審議となっており、これらの重要法案を今秋の臨時国会で成立できるかどうかが当面の焦点だ。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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