OVER VIEW

<OVER VIEW>未曾有の不況下、国内IT企業 02年3月期決算総覧 Chapter8

2002/08/26 16:18

週刊BCN 2002年08月26日vol.954掲載

 

ソフトバンクグループ

ソフトバンク本体は1778億円の巨額特別損失もあって、2%の増収であったが、純損益で887億円と巨額赤字に陥った。広告、Yahoo!BB、オークションと3本柱のビジネスが揃ったヤフー、オンライン証券取引を主力とするイー・トレード、金融商品評価情報を提供するモーニングスターは増収で、営業利益でも増益となり堅調な決算であった。ソフトバンクが239億円の営業赤字となった大きな要因はブロードバンド・インフラ179億円、イーファイナンス49億円、その他事業66億円の営業赤字である。   (中野英嗣)

■本体は苦境、関連会社は堅調なグループ

ソフトバンクは純粋持株会社であり、ブロードバンド・インフラ、メディア・マーケティング、放送メディア、インターネット・カルチャー、海外ファンドからeファイナンス、eコマース事業までを手掛けるわが国を代表するドットコム企業である。

02年3月末、同社の連結子会社、関連会社合計は398社に達している(Figure43)。

ドットコムの代表として、ソフトバンク本社、ブロードバント・インフラからオークションまで手掛けるヤフー、オンライン証券取引イー・トレード、各種金融商品評価情報を提供するモーニングスターの決算を分析してみよう(Figure44)。

ソフトバンク売上高は前年比2.1%増の4053億1400万円だったが、経常損益は333億200万円の赤字、また巨額1778億3600万円の特別損失を計上したこともあって、純損益も887億5500万円の赤字となった。

経常でも前年の200億6500万円の黒字から大幅赤字になったのは、売上総利益が前年比34.0%減、販管費が15.3%増になったからである。

連結決算初年度となったヤフー売上高は314億9700万円、営業利益は売上高比33.0%の104億600万円、経常利益103億1800万円、純利益も売上高比18.6%の58億6800万円ときわめて好調な決算であった。

オンライン証券取引を代表的事業とするイー・トレード売上高は前年比38.5%増と大きく伸びて87億6300万円、経常利益も前年比10.3%増の11億1700万円となったが、純利益は前年比57.9%減の4億1500万円という大幅減益であった。

この大幅減益は、前期に営業外収益4億4600万円を計上していた旧大沢証券買収により発生した連結調整勘定の償却が前期末までで完了したこと、および、前期末までにイー・トレード証券の繰越欠損金がすべて解消され、当期より通常通りの税率で法人税等が計上されていることによる。

金融商品等の評価情報を提供するモーニングスターは売上高が前年比19.9%増の7億9100万円、経常利益は52.8%増2億8700万円、そして純利益も53.0%増の1億6300万円と、大幅な増収増益決算であった。

この増収は、ウェブ広告が落ち込んだが、投資教育・コンサルティング、個別株・ファンドレポート、カスタムデータの販売が伸びたことによる。

これでモーニングスター商品別売上高構成はウェブ広告28%、投資教育・コンサルティング31%、個別株・ファンドレポート27%とそれぞれほぼ3分の1ずつを占めることになって安定的売上構成に近づいていると同社は説明する。

■特損1778億円計上のソフトバンク

ソフトバンクが239億円の営業赤字となったのは、BBテクノロジーなどブロードバンド・インフラ事業の立ち上げ費用等がかさみ179億円の営業赤字を計上したこと、および厳しい経済環境のなか、イーファイナンス事業で49億円の営業赤字を計上したことが大きな要因だ。

ソフトバンク・セグメント別外部顧客売上高は売上高の大きなeコマースが前年比4.4%増となったが、eファイナンス30.4%、メディア・マーケティング9.3%、放送メディア9.3%、テクノロジー・サービス15.1%とそれぞれ減少した。

これらの落ち込みによる利益圧迫と新規に加わったADSL等ブロードバンド・インフラ事業赤字によって239億円の営業赤字となった(Figure45)。

ソフトバンク決算で毎年見逃せないのは巨額に達する特別利益、特別損失である(Figure46)。

00年3月から02年3月にかけて同社特別利益は2890億円、1699億円、911億円と大きく落ち込んだ。これに対して特別損失では投資有価証券や関係会社株式の売却損、評価損が00年3月の42億円から02年3月には1341億円と大きく膨らんだ(Figure46)。

同社特別損失は00年3月2049億円、01年3月1029億円、02年3月1778億円である。この結果ソフトバンク特別利益と特別損失の差額は00年3月プラス841億円、01年3月プラス669億円であったが、02年3月にはマイナス866億円となり、同年税引き前損失1199億円という結果となった。

また特別利益が2890億円と巨額であった00年3月にソフトバンクは770億円の事業撤退損失、1191億円の無形固定資産償却費を計上していた。

■3本柱事業が定着したヤフー

インターネット上の情報検索サービスから出発したヤフーの現在の主力事業は広告、ADSLサービスをベースとするYahoo!BB、そしてオークションと3本柱となった(Figure47)。

事業別外部顧客売上高構成比は広告39.0%、Yahoo!BB42.2%、オークション7.7%、その他11.1%となった(Figure48)。

ヤフー・ビジネス最大の特徴はいずれの事業セグメントも営業利益率がきわめて高いことだ。営業利益率は広告75.7%、Yahoo!BB38.8%、そしてオークション売上高は24億円といまだ小さいが、96.1%というきわめて高い営業利益率となっている。この結果、全社でも33.0%ときわめて高い利益率となった。

01年6月より開始したYahoo!BB事業の02年3月末の接続回線数は約43万回線である。BB事業では新年度からブロードバンド電話サービスの法人会員の積極的開拓が課題となっている。

オークション事業の売上高に占める主力は本人確認にともなう参加費である。

01年5月に本人確認システムを導入した時点では一時的に出品数は減少したが、02年3月末の常時出品数は約420万点、同月の月間新規出品累計数も約1800万点、本人確認登録者数も約165万人と過去最高となっている。

ソフトバンク・グループ決算はソフトバンク自体は恒例化した巨額特損で厳しさが増している。これに対しイー・トレードのオンライン証券取引、モーニングスターの金融商品評価情報提供、そしてヤフーのオークションなど典型的eコマースビジネスは順調に推移しているといえるだろう。
  • 1