WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第120回 DB、新競争時代へ

2002/09/09 16:04

週刊BCN 2002年09月09日vol.956掲載

 データベース(DB)とウェブサービスソリューション構築は当然密接な関係がある。ウェブサービス時代に向けて世界のDBは新しい競合時代に突入したといえるだろう。米ITアナリスト、ポール・クリル氏は新しい時代のDBについて次のように解説する。

ウェブサービスを軸に

 「XML(エクステンデッド・マークアップ・ランゲージ)はインターネットの強力な混成語(linga franca)になったことに誰も異論はない。しかし、XMLとDB間のきちんとしたインテグレーションルールが欠如すれば、ウェブサービスの広域展開の大きな阻害要因になる。既存DBとの連携のためDBが冗長性を要求され、ウェブサービス向けアプリケーションパフォーマンスががくんと低下すれば、XML自身にもユーザーから非難の声が集中してしまう。HTML(ハイパー・テキスト・マークアップ・ランゲージ)は表現形式を記述する言語であるため、自然言語のように『データの必要部分を切り出す』ことは難しい。そこでウェブサービス時代には、XMLの『自由なタグ付け』によりデータを切り出し易くしてインターネット自体を巨大なデータベースに変えてしまう必要が生まれた」

 このようにウェブサービス時代到来を睨んで、オラクル、IBM、マイクロソフトの3大DBプレーヤーは、新しいデータベース開発競争に突入した。それと同時に、既存のDB世界市場のシェアにも過敏に反応するようになった。データクエストは、「01年世界DB市場のシェアは永年トップのオラクルに替わってIBMがその地位を占めた」と発表し、オラクルはこれを強く否定した。データクエストによると、「00年のシェアはオラクル34.1%、IBM 33.3%だったが、01年にはIBM 34.6%に買収したサイベース3.0%が加わり37.6%、オラクル32.0%」である。

 オラクルがこれを強く否定するのは、IDC発表によれば01年も依然として僅差ながら同社がトップシェアであるからだ。DB市場のウェブサービス時代の競争は、当然ウェブサービス向け機能の開発である。ウェブサービスの標準XMLに対応し、複数のDBを一元的に管理し、ユーザーはウェブサービス用データを異なるDBから瞬時に取り出すことを可能にしなければならない。これと同時にウェブサービスでは、サーバー、ストレージなどと同様にDB自体も無障害の連続運用に耐えなければならない。

 このためIBMは、当初ゼロダウンサーバー開発の目的で発足した自律的機能をもち自動修復などを実現する「プロジェクトeLiza(イライザ)」技術を自社DB2にも搭載することを発表し、その初期版「DB2 8.0」のテスト版を02年7月配布開始した。IBMを追いかけるオラクルは、XQuery機能をもつ「XDB」を開発し、マイクロソフトもオラクル同様の機能を実現するため03年に「XML SQL」を出荷すると発表し、ウェブサービス時代のDB開発競争が激化している。(中野英嗣●文)
  • 1