岐阜県庁から車で西に向かって15-20分。大垣市内に入ると、前方にウサギの耳のように2本の塔が立つ特徴ある外観の建物が見えてくる。岐阜県のIT戦略拠点「ソフトピアジャパン」のセンタービルだ。

地域IXは成功するか

 ソフトピアジャパンは、米シリコンバレーのようなIT産業の集積地をめざして93年から整備が本格的に進められてきた。96年に中核施設であるセンタービルが完成。IT企業の進出も相次ぎ、いまではセイノー情報サービスなどの地元企業だけでなく、NEC、富士通などの大手ITベンダーのオフィスも並ぶ。

 今年4月には、センタービル、別館のアネックス(98年)、インキュベート(企業育成)機能を担うドリームコア(00年)に次ぐ4番目の公共施設として、宿泊設備や飲食施設を備えた「ワークショップ24」がオープンした。「2005年に5000人のIT技術者を集積する」――。梶原拓・岐阜県知事が掲げた目標の達成期限まであと3年。ソフトピアジャパンの昼間人口はようやく1700人を突破したところで、目標までにはこれから3倍に増やさなければならない。そのためにも、ソフトピアジャパンの魅力を高め、国内外のIT企業を引き付ける起爆剤が必要だ。

 「地域連携ネットワーク構想」――。岐阜県が打ち出したのは、ISP(インターネットサービスプロバイダ)を相互に接続する接続点「インターネット・エクスチェンジ(IX)」をソフトピアジャパン内に設置、岐阜県内だけでなく、近畿・東海・北陸の地域IXと連携して基幹通信網を確立しようという構想である。岐阜県では、「岐阜スーパーハイウェイ」の構築を進め、来年3月には岐阜県内の99市町村全てをカバーするネットワークが完成する。これらの地域のネットワークを連携することで、効率的でかつ安全性の高い広域ネットワークが誕生する。

 すでに近畿、東海、北陸の各府県の担当者や識者で構成する地域連携ネットワーク協議会も発足。月1回ペースで会議を開き、地域連携の具体策の検討が始まっている。「なぜ“関が原”で合戦が行われたのか。そこには必然性があった。現代でも、新幹線、高速道路、そして通信回線、日本の最も重要なインフラである東西を結ぶ幹線は全て、関が原を通っている」財団法人ソフトピアジャパンの研究開発グループリーダー丹羽義典氏は、岐阜県の地理的な重要性をそう力説する。

 さらに国際海底ケーブルの陸揚げ拠点の整備が進められている隣の三重県とも提携。将来的には、岐阜IXと三重国際IXを結び、国際インターネット網とも直結したネットワーク環境を整える考えだ。今年4月には、岐阜県と三重県も資本参加した岐阜IXの運営会社「ジーシーアイエックス(GCIX)」を設立。岐阜スーパーハイウェイを通じて岐阜県内の情報トラフィックを集約、KDDIとNTTコミュニケーションズが提供する通信回線を通じて東京のIXと接続するサービスを提供する。

 地域IXの必要性は、従来から指摘さてきたものの、東京に比べて情報量が圧倒的に少ない地方で採算ベースに乗せるのは難しい。「岐阜のトラフィックを集約すると毎秒200メガバイト。その規模なら収益を確保できる」(伊藤義仁・GCIX社長)というが、狙いどおりに集約できるかどうか。「梶原知事からは、GCIXに接続する県内ISPのサービス料が従来に比べて3割安くなるように指示されている」(丹羽氏)。安い接続料で県内ISPの競争力を高め、トラフィック量を確保する作戦である。岐阜県の戦略的な取り組みが成功すれば、地域IXの事業化をめざしている他の地方自治体にも大きく影響することになりそうだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)