前号では、中小企業のIT化に深く関わる存在として銀行を取り上げた。もう1つ、中小企業の経営に密着するのが税理士である。国内には6万6000人が存在する。彼らが中小のIT化“指南役”となる可能性があるのだ。

この4月、税理士法が改正された。改正の目玉は「税理士法人制度」の採用。報酬規定と広告規制が撤廃された。つまり税理士も一般企業のように自由競争する時代に入ったのである。税理士はこれまで無風状態のなか30-50社の安定した顧問先を抱え、伝票の記帳代行を収益源としてきた。だが、法人化が進むと、記帳代行のような定型業務は低廉化し、経営改善のコンサルティング業務を手掛けなければ生き残りは難しくなる。

そんななか、顧問へのIT化指南が新たな収益源と目されつつある。東京で税理士業を営むお茶の水総合事務所の石井輝光代表は、「今の時代、経営コンサルティングを手掛けようとすればITの知識は不可欠」と話す。

一足先に競争原理が組み込まれた米国の会計人業界で、IT化コンサルはすでに主業務の1つとなっている。それを巧く利用するのが会計ソフト最大手のインテュイット。同社は「IPAP制度」で公認会計士(米国には税理士が存在しない)を抱え込み、同社製品の推奨役とする。国内でもインテュイット日本法人やオービックビジネスコンサルタント(OBC)が同様の施策を試み始めている。また、前出の石井代表のように自らIT関連資格を取得する税理士が増え始めた。

もちろん税理士業界は古い体質で、税務署を退官した高齢者が従事するケースも多い。6万6000人がすべてIT化に関わるわけではない。それでも「30代、40代の若い層を中心に、IT化を軸とした経営コンサルへ乗り出す税理士が増えている」(インテュイット関係者)。

税理士は顧問先の財務データを把握し、経営に深くコミットできる立場にある。これは一般のITベンダーにはない強み。経営者からの信頼も厚い。彼らがITに関する知識・技術を武装すれば、経営の視点からIT化を提案できる。「財務のみならず、人事や営業分野の情報化を提案していく」(石井代表)。ITベンダーは今後、税理士との連携を考えるべきではないか。