変わるかシステム入札

<変わるかシステム入札 第二章>富士総合研究所(下)

2002/09/16 20:43

週刊BCN 2002年09月16日vol.957掲載

 電子自治体の実現が進む中で、富士総合研究所では実際に自治体のコンサルティング業務も実施している。その際、自治体側はシステムを施行する業者をどう見ているのか。同社の相原慎哉主事研究員、片田保主事研究員に聞いた。

ITを評価できる人材を

 ――自治体側からシステムを施工するベンダーに対してはどんな声があがっているのか。

 片田
 「なんでもできます」という解答は、逆に現場が混乱する。自社ではできない案件でも「できます」と業者が答えた結果、混乱が起こったという実例を聞く。できること、できないことはきちんと切り分けて話して欲しいと自治体側では考えている。

 相原 ディーラーのビジネスとして、「なんでもできる」よりも「この分野なら任せてくれ」といった得意分野をもつことの方が広がりがあるように思う。「この分野なら全国で一番」という力があれば、その地元だけではなく全国での事業展開が可能になるのではないか。

 ――現在の入札の仕組みは、複数企業の共同体という形態がとりにくいという問題もある。

 相原
 確かにそうした問題は改善しなければならないだろう。しかし、機能分業によりひとつのシステムをつくり上げることができれば、e-Japanに掲げられているベンチャー企業の育成にもつながる。ぜひ実現していって欲しい方向ではある。

 ――自治体に専任の担当者がいないので、システムを構築する業者との密な意志疎通ができないという声もある。

 相原
 提案されたシステムを評価する人材は、やはり内部に抱えているのが望ましいのではないか。運用は外部に任せても、企画の評価は内部で行うべきだろう。

 片田 自治体にも一般企業のCIOに該当する担当者が必要だ。マニア的なITの知識をもっている必要はない。実状にあったシステムとは何かをきちんと業者と話し合うことができる人材は不可欠だろう。

 ――一般企業でも、経営にプラスになることからIT導入を推進できる人材が不可欠とされている。しかしその人材がいないことが大きな問題となっている。

 相原
 各案件の比較や内部の調整などは、やはり外部の業者が行うことは難しいのではないか。

 片田 実際にあったケースだが、確かに技術的には実現したものの、非常に無謀でセキュリティなどの面から見て問題があるシステムというものもある。できるからやったというのは逆に危険で、やはりきちんと精査する目は必要だろう。(三浦優子)
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